十八歳の花嫁
第2章 婚約者は4人?
第1話 急転
第2章 婚約者は4人?
第1話 急転
「待たせたかな?」
約束どおり、十七時に美馬はやって来た。
昨夜は違う車に乗っていた気がする。帰るとき後部座席に乗り込んだので、おそらく運転手は他にいたのだろう。だが、今日は彼自身が運転していた。
白のポルシェ911GT2。もの凄く高価な車であることは愛実にもわかる。
しかし、愛実が気になっているのは別のことだった。
「あ、いえ……今、出て来たところですから。あの……ひとつ聞いていいですか?」
「何? ひとつでいいのか?」
最初に会ったときは、冷たくて怖い人、という印象が強かった。それに比べて今日は、もったいないほど素敵な笑顔を見せてくれる。
家族のことにずっと一生懸命だった。
高校三年にもなって、愛実には男女交際どころか片思いの恋すら経験がない。そんな彼女にとって、美馬から優しい笑顔を向けられるだけで魔法にかけられた気分だ。
「あの……美馬さんって、おいくつなんですか?」
「ああ、八月に三十になる」
「ええっ? そんなにお若いんですか!?」
愛実は驚きのあまり、声が裏返った。三十代半ば、ひょっとしたら後半かもしれないと思い込んでいた。
愛実だけじゃなく、尚樹も同じではないだろうか。
彼女の反応に、美馬が気を悪くしたのではないか、と思ったが……。逆に、彼は声を立てて笑い始める。
「私はそんなに年寄りに見えるのか? そう言えば、君の弟にも『おじさん』と呼ばれたな」
「す、すみません。社長さんと聞いて……てっきりもっと年上の方だとばかり」
「別に私の会社というわけじゃない。デパートの社長とはいえ、売り場には立ったこともないし……。典型的な一族経営。縁故採用というヤツだな」
愛実の横に立つとスッと腰に手を添え、助手席の側まで連れて行ってくれた。
ドアを開くと「どうぞ」とエスコートしてくれる。
そんな美馬の動作に、愛実は自分でも呆れるほどときめき、舞い上がってしまう。
その直後、ふと顔を上げた彼女の目にサイドミラーに映る自分が映った。
第1話 急転
「待たせたかな?」
約束どおり、十七時に美馬はやって来た。
昨夜は違う車に乗っていた気がする。帰るとき後部座席に乗り込んだので、おそらく運転手は他にいたのだろう。だが、今日は彼自身が運転していた。
白のポルシェ911GT2。もの凄く高価な車であることは愛実にもわかる。
しかし、愛実が気になっているのは別のことだった。
「あ、いえ……今、出て来たところですから。あの……ひとつ聞いていいですか?」
「何? ひとつでいいのか?」
最初に会ったときは、冷たくて怖い人、という印象が強かった。それに比べて今日は、もったいないほど素敵な笑顔を見せてくれる。
家族のことにずっと一生懸命だった。
高校三年にもなって、愛実には男女交際どころか片思いの恋すら経験がない。そんな彼女にとって、美馬から優しい笑顔を向けられるだけで魔法にかけられた気分だ。
「あの……美馬さんって、おいくつなんですか?」
「ああ、八月に三十になる」
「ええっ? そんなにお若いんですか!?」
愛実は驚きのあまり、声が裏返った。三十代半ば、ひょっとしたら後半かもしれないと思い込んでいた。
愛実だけじゃなく、尚樹も同じではないだろうか。
彼女の反応に、美馬が気を悪くしたのではないか、と思ったが……。逆に、彼は声を立てて笑い始める。
「私はそんなに年寄りに見えるのか? そう言えば、君の弟にも『おじさん』と呼ばれたな」
「す、すみません。社長さんと聞いて……てっきりもっと年上の方だとばかり」
「別に私の会社というわけじゃない。デパートの社長とはいえ、売り場には立ったこともないし……。典型的な一族経営。縁故採用というヤツだな」
愛実の横に立つとスッと腰に手を添え、助手席の側まで連れて行ってくれた。
ドアを開くと「どうぞ」とエスコートしてくれる。
そんな美馬の動作に、愛実は自分でも呆れるほどときめき、舞い上がってしまう。
その直後、ふと顔を上げた彼女の目にサイドミラーに映る自分が映った。