十八歳の花嫁
第11話 敗残
第11話 敗残
一方、西園寺邸でも愛実が出発する直前、ひと波乱起きていた。
原因は尚樹である。
「どうして今になって花婿が替わるんだよ! そんなの変だろう? 姉さんは美馬さんが好きなんじゃなかったのか?」
尚樹にはどうしても納得できないらしい。
淡々と準備を進める愛実の隣で、憤りを露わにして姉を責め立てる。
「いい加減にしなさい、尚樹。子供のあなたにはわからないこともあるのよ。同じ美馬の男性に嫁ぐのだから、大した問題ではないわ」
だが、そんな母の言葉に尚樹は激怒して言い返した。
「あんたは黙ってろよ!」
「まあ! 母親に向かってなんて口を聞くんです?」
「父さんが死ぬまで、僕らの面倒をみてくれたのは、入院してるおばあ様だ。そのあとは、ずっと姉さんに頼りっ放しだった。あんたは姉さんに面倒をかけるだけで、何にもしてないじゃないか!?」
「なんてことを言うの、尚樹さん! 誰がお腹を痛めて産んであげたと思ってるの? この私ですよ!」
「産んだだけで母親面はやめてくれ! 慎也のときに言ってたのを聞いたんだ。胸の形が崩れるから母乳は飲まさないって。有名私立のときには授業参観も来たくせに、公立に移ったらまるで無視じゃないか? 慎也の入学式だって」
「だから公立など反対だったのです。まったく、庶民と同じ学校に通うようになって、悪い言葉ばかり覚えてきて……」
「それもこれも、全部あんたの――」
「もう、やめてっ!」
母と尚樹の喧嘩を大声で止めたのは愛実だった。
「尚樹もやめて……お願いだから……慎也が怖がってるじゃない」
一方、西園寺邸でも愛実が出発する直前、ひと波乱起きていた。
原因は尚樹である。
「どうして今になって花婿が替わるんだよ! そんなの変だろう? 姉さんは美馬さんが好きなんじゃなかったのか?」
尚樹にはどうしても納得できないらしい。
淡々と準備を進める愛実の隣で、憤りを露わにして姉を責め立てる。
「いい加減にしなさい、尚樹。子供のあなたにはわからないこともあるのよ。同じ美馬の男性に嫁ぐのだから、大した問題ではないわ」
だが、そんな母の言葉に尚樹は激怒して言い返した。
「あんたは黙ってろよ!」
「まあ! 母親に向かってなんて口を聞くんです?」
「父さんが死ぬまで、僕らの面倒をみてくれたのは、入院してるおばあ様だ。そのあとは、ずっと姉さんに頼りっ放しだった。あんたは姉さんに面倒をかけるだけで、何にもしてないじゃないか!?」
「なんてことを言うの、尚樹さん! 誰がお腹を痛めて産んであげたと思ってるの? この私ですよ!」
「産んだだけで母親面はやめてくれ! 慎也のときに言ってたのを聞いたんだ。胸の形が崩れるから母乳は飲まさないって。有名私立のときには授業参観も来たくせに、公立に移ったらまるで無視じゃないか? 慎也の入学式だって」
「だから公立など反対だったのです。まったく、庶民と同じ学校に通うようになって、悪い言葉ばかり覚えてきて……」
「それもこれも、全部あんたの――」
「もう、やめてっ!」
母と尚樹の喧嘩を大声で止めたのは愛実だった。
「尚樹もやめて……お願いだから……慎也が怖がってるじゃない」