十八歳の花嫁

「姉さん、僕らはここを出るよ。何度も言うけど、母さんのことは無視していいんだ。親戚連中だって、金に目がくらんで……自業自得じゃないか! いざとなったら公的施設もある。僕だって中学を出たら働いて」

「あなたはそれでいいかもしれない。じゃ、真美と慎也はどうなるの? 家族みんなバラバラになるのよ。それに、おばあさまも。お金が払えなくなったら、病院は追い出されるわ」

「そんなの母さんの責任じゃないか!」

「責任がなければ、どうなってもいいの? 違うでしょう? 大切に思うから守りたいの。手を差し伸べたいって思うのよ。人の心は義務や責任だけでは動かないわ」


愛実は深く息を吸う。


「――心配をかけて、振り回してごめんなさい。すべて姉さんが自分で決めたことだから。覚悟はとうに決まっていたはずなのに、藤臣さんが優しすぎて忘れていたのよ。でも、もう平気」


弟妹をみつめて愛実は優しく微笑んだ。


「当たり前ですよ。今さらそんな……破談にでもなれば」


入り口に立ち、母はブツブツ言っている。

そんな母にも愛実はキッパリと宣言した。


「結婚したら十八歳でもわたしは成人と同等の資格を持ちます。西園寺家の資産はすべてわたしが管理して、お母さん名義ではどんな借金もできないようにしますから。文句があれば、ひとりでこの家から出て行ってください!」

「なっ!」


絶句する母を真正面から見据える愛実だった。

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