十八歳の花嫁
愛実の胸を様々な思いがよぎる。
もし、和威の言うことが真実なら、藤臣はどれほど落ち込んでいるだろう。
やっと無条件に愛情を注げる対象を見つけたというのに。それが偽りだと知れば……。
手にした白バラとカサブランカのブーケを愛実は力いっぱい握り締める。
一方で、弥生は周囲の好奇に満ちた視線を跳ね返すかのように、平然と口を開いた。
「それがどうしたと言うのです? 種を撒いたのは藤臣さんではありませんか。わたくしは何も強制しておりませんよ。逃げ出した藤臣さんに代わり、和威さんとの結婚を提案いたしました。喜んで応じたのは愛実さんなのですから」
愛実は否定したかった。
だが……弥生の言葉は足りないだけで間違ってはいないのだ。
和威も顔を背けただけで、ひと言も言い返せない。
そんな彼を追い詰めるように、弥生は言葉を足した。
「嫌なら構いません。わたくしの孫は他にもおります。愛実さんには信一郎さんか宏志さんを選んでいただきましょう」
「そ、そんなわたしは……」
愛実は上手く言葉が出ない。
「あらあら、ご親戚になると思って、色々業務提携が済んでおりますのに。でも、愛実さんがお嫌なら仕方ありませんね。貸し付けた資金の返済方法は、お身内の方と話し合ってくださいな」
弥生の背後で母方の親戚が青ざめるのが見える。
愛実の母も同様だ。
「ああ、契約破棄の慰謝料は、和威さんが婚約を破棄した慰謝料と相殺でよろしいでしょう。わたくしも鬼ではありませんからね」
弥生は勝ち誇ったような笑みを浮かべ、愛実の横を通り過ぎようとする。
弥生を支える加奈子も同様だ。
一度は諦めたものの、我が息子たちに勝機が出てきたことを知り、喜びに頬が緩んでいる。
「待ってください――わかりました。このまま結婚式を続行してください。我がままを言って申し訳ありませんでした」
それは和威だった。