十八歳の花嫁
第17話 求婚
第17話 求婚
「君のせいだ。何もかも。正しいと思ってきたすべてを……愛実、君が覆していく」
「ごめんなさい……ごめんなさい、わたし」
藤臣の手にあると思い続けた復讐という名の正義も、この世で“愛”と名前が付くものはすべて有償だという真実も、愛実は粉々に打ち砕いてくれた。
今、彼の手の中にあるのは、折れそうなほど細い彼女の腕だけ……。
ようやく掴んだ“愛”を彼は壊れ物を扱うように抱き寄せた。
「藤臣さん? あの」
「俺は君のせいですべてを失った。三十年間積み上げてきたすべてを投げ出したんだ。ごめんなさい、の言葉だけで済むと思うな」
「ごめんな……さ」
藤臣は愛実の声を強引に奪う。
それは祭壇の前で交わすはずだった誓いの口づけにも等しい。
焦げ付くような感情が少しずつ癒されていく。
もうどうなってもいい、と投げ出したはずの未来が、再び彼の前に広がり始める。
「ダメだ。許さない。何があっても君を自由になどしてやるものか!」
愛実を抱きしめ、ほどけかけた髪に顔を埋めて呻いた。
我ながら支離滅裂だ。まるで脅迫するような口調である。これでは愛実を怯えさせてしまう。そんな思いが藤臣の頭を掠めた。
しかし、本当の愛など何と言って伝えたらいいのだろう。
言葉にした瞬間、すべてが消えてしまいそうだ。
戸惑う藤臣より先に、愛実が口を開いた。
「君のせいだ。何もかも。正しいと思ってきたすべてを……愛実、君が覆していく」
「ごめんなさい……ごめんなさい、わたし」
藤臣の手にあると思い続けた復讐という名の正義も、この世で“愛”と名前が付くものはすべて有償だという真実も、愛実は粉々に打ち砕いてくれた。
今、彼の手の中にあるのは、折れそうなほど細い彼女の腕だけ……。
ようやく掴んだ“愛”を彼は壊れ物を扱うように抱き寄せた。
「藤臣さん? あの」
「俺は君のせいですべてを失った。三十年間積み上げてきたすべてを投げ出したんだ。ごめんなさい、の言葉だけで済むと思うな」
「ごめんな……さ」
藤臣は愛実の声を強引に奪う。
それは祭壇の前で交わすはずだった誓いの口づけにも等しい。
焦げ付くような感情が少しずつ癒されていく。
もうどうなってもいい、と投げ出したはずの未来が、再び彼の前に広がり始める。
「ダメだ。許さない。何があっても君を自由になどしてやるものか!」
愛実を抱きしめ、ほどけかけた髪に顔を埋めて呻いた。
我ながら支離滅裂だ。まるで脅迫するような口調である。これでは愛実を怯えさせてしまう。そんな思いが藤臣の頭を掠めた。
しかし、本当の愛など何と言って伝えたらいいのだろう。
言葉にした瞬間、すべてが消えてしまいそうだ。
戸惑う藤臣より先に、愛実が口を開いた。