十八歳の花嫁
「それって、藤臣さんの傍にいていいんですよね? よかった……嬉しい」
「う、うれしい? それでいいのか? 俺が、怖くないのか?」
「どうして怖いんですか? 藤臣さんはこんなに優しくて温かいのに。いつだって、わたしが苦しくないように、それでいて強く抱きしめてくれたから」
藤臣は恐る恐る尋ねた。
「俺はずっと君を騙していたのに?」
胸の中で愛実は無言のまま小さく首を振る。
「愛してると嘘をついていたんだぞ」
「わたしのこと……愛してないんですか?」
「い、いや、愛してる。今はそう思う。でもあのときは……」
愛実の身体目当てだった。
彼女の同意を得るために、愛の言葉を利用し、本物の結婚にしようとしたのだ。
「あの……何か違うんですか? “愛してる”は“愛してる”でしょう?」
その言葉に、藤臣は気づかされた。
懸命に抵抗していたのは自分だけだった、と。
心は当の昔に白旗を振っている。
「いや、違わない。ああ、わかったよ。もう降参だ。やっぱり、物分りのいい大人にはなれそうにない。君を俺の人生に引きずり込むことに決めた」
「藤臣さ……きゃっ!」
酔いも疲労も一気に藤臣の身体から抜けた。
新たな五感が呼び覚まされ、全身に力が漲り始める。
その勢いを借りて、愛実を抱き上げたのだ。
「その代わり――俺が守ってやる。だから、俺のものになれ」
愛実は彼にしがみ付いたままうなずく。
(善行なんぞクソ食らえだ! 十八歳だろうが、この場で抱いてやる!)
最初からそうしていればよかったのだ。
自分の女にしていれば、どんな邪魔が入ったとしても、手放そうなんて考えることはなかっただろう。
たとえ愛実が身を引こうとしても、鎖に繋いででも引き止めたはずだった。