十八歳の花嫁

息の詰まりそうな時間が流れ、愛実は美馬から手を離す。


「美馬さんのお名前は聞きました、随分親切にしていただいて。あの……わたしに何か?」


暁は『ふーん』とうなずきつつ、美馬に思わせぶりな視線を送る。


「申し訳ありませんが、本日のデートは変更していただけますか? 愛実さんを美馬の本宅へご案内いたします」


長倉弁護士は儀礼的な謝罪を口にするが、その言葉の内容は“命令”としか聞こえない。


「え? あの、そんな急に」

「弥生さまから直接お聞きになられたほうがご理解いただけるかと。さあ、遠慮なさらず、どうぞ」


そう言って彼らの車に乗るよう促される。

長倉弁護士の強引な態度に愛実は嫌悪を感じていた。
仮に、美馬家に行くとしても、見知らぬ人の車に乗るよりは美馬の車に、そう思ったが……。


「それはちょっと不味いんだよね。藤臣くんは、あくまでもトボけるつもりだろうけど……。フェアを期すために、愛実さんにはこっちに乗ってもらおう。いいよね?」


(フェアっていったい、何が起こってるの?)


美馬に聞きたいことはたくさんある。

だが、


「予定が変わってすまない。彼らの身元は私が保証する。君を傷つけるようなことにはならない。私も後を追うから……彼らと一緒に、美馬の本家に行ってもらえるかな?」


愛実は黙ってうなずいた。

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