十八歳の花嫁

長女の婿が逮捕され、亡き夫と孫にも逮捕状が出ていると知り、弥生は倒れた。

幸い、発表ほど大きな病気ではなかったのだが……。
あれからわずか二ヶ月で弥生は急激に老け込みつつある。杖をついて歩いていたのが、今は車椅子なしで移動もできず、排泄や入浴にも介護が必要だった。


「あなたもお人好しよね。メイドはひとりもいなくなったんでしょう? 家のことをして、大奥様の面倒まで」

「弥生さまのお世話は佐和子さんも手伝ってくれてますし、執事の糸井さんも残ってくださって……」


加奈子は夫と息子が逮捕されたにも関わらず、次男の宏志を伴い海外に出てしまった。
信二と信一郎は刑が確定するまで海外には出られず、マスコミにも知られていない場所に裁判まで隔離されるという。

和威は今月に入り職場に復帰したものの、九月から系列子会社勤務の辞令が出た。
なんと全く畑違いの営業に回され、福岡支社に転勤となる。
否応なしに屋敷を出ることになり、『何もかも任せることになってしまって』と悔しそうだった。

そして、佐和子と弘明は――。


「でも、驚いたわね。内部告発なんて。あのとき、暁さんはご存じだったのかしら?」


信二たちの犯罪を告発した人物、それは美馬弘明だった。

弥生と藤臣が互いを牽制し合っている隙に、弘明は着々と準備を整えていた。
おそらく、暁が弥生の企みに乗ったふりをして、余計に引っ掻き回していたのだろう。父親の計画を悟られないように。

――藤臣はそんなふうに言っていた。


「わかりません。でも、藤臣さんのことを嫌っておられなかったと思います。もしお会いできたら、あのときのお礼を言いたいと思っています」


弘明は離婚届を残し、この家と会社を去った。
暁も退職したという。


「……相変わらず、おめでたい性格ね」


言い回しはきついが、由佳の口調は楽しそうだった。

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