十八歳の花嫁
【番外編】
―甘くて切ない初めての夜―
【―甘くて切ない初めての夜―】
「――よし!」
携帯電話の電源をオフにして、藤臣はホッと息を吐いた。
今日は待望の新婚初夜だ。
ふたりは今、式を挙げた邸内の洋館にいた。
愛実の希望で、今夜ひと晩だけここで過ごすことになったからだった。
残念ながら、この洋館は来週にも取り壊し、業者に引き渡さなければならない。
愛実との新生活を想像して手を加えた新居。この寝室も、そして思いの籠もった子供部屋も、何より、愛実の寂しそうな顔がつらい。
さらには、藤臣には明日も仕事があり、ろくにハネムーンにも連れて行ってやれないのだ。
今の時期、海外に出るなど逃亡扱いにされかねない。
かといって、近場ではどこに行ってもマスコミの餌食になりそうだ。
(おまけに、たったひと月で単身赴任だ。結局、思い出の家も取り戻してやれず、ばあさんの面倒だけ押し付けることになって……)
好きでどうしようもなかった、とはいえ、三十男として分別をつけるべきだったんじゃないか。
そんな気持ちも藤臣は捨てきれずにいる。
そのとき、シャワールームから愛実の声が聞こえた。
「あの……藤臣さん」
「どうした、愛実? 何か問題でも?」
「えっと……その」
実を言えば洋館は改装途中で止まったままだった。
窓ガラスの入っていない部分すらある。
寝室だけは藤臣が新婚初夜を過ごすにふさわしく整えたが、ひょっとしたら水回りに問題が起きたのかもしれない。
彼はそんなふうに思い、シャワールームのドアを少しだけ開け、顔を覗かせる愛実に近づいた。
「――よし!」
携帯電話の電源をオフにして、藤臣はホッと息を吐いた。
今日は待望の新婚初夜だ。
ふたりは今、式を挙げた邸内の洋館にいた。
愛実の希望で、今夜ひと晩だけここで過ごすことになったからだった。
残念ながら、この洋館は来週にも取り壊し、業者に引き渡さなければならない。
愛実との新生活を想像して手を加えた新居。この寝室も、そして思いの籠もった子供部屋も、何より、愛実の寂しそうな顔がつらい。
さらには、藤臣には明日も仕事があり、ろくにハネムーンにも連れて行ってやれないのだ。
今の時期、海外に出るなど逃亡扱いにされかねない。
かといって、近場ではどこに行ってもマスコミの餌食になりそうだ。
(おまけに、たったひと月で単身赴任だ。結局、思い出の家も取り戻してやれず、ばあさんの面倒だけ押し付けることになって……)
好きでどうしようもなかった、とはいえ、三十男として分別をつけるべきだったんじゃないか。
そんな気持ちも藤臣は捨てきれずにいる。
そのとき、シャワールームから愛実の声が聞こえた。
「あの……藤臣さん」
「どうした、愛実? 何か問題でも?」
「えっと……その」
実を言えば洋館は改装途中で止まったままだった。
窓ガラスの入っていない部分すらある。
寝室だけは藤臣が新婚初夜を過ごすにふさわしく整えたが、ひょっとしたら水回りに問題が起きたのかもしれない。
彼はそんなふうに思い、シャワールームのドアを少しだけ開け、顔を覗かせる愛実に近づいた。