十八歳の花嫁

「もう、できないよ。性欲を処理するだけのセックスなんて、二度としない……いや、できない。“愛し合う”ってことを君に教わったから」


愛実の髪に口づけ、しだいに額、瞼とキスが下りてくる。


「それって……違うこと?」

「ああ、全然違う。こんなに素晴らしい経験は初めてだ。私は今まで何をしてきたんだろう……」

「じゃあ、全部忘れてください。由佳さんのことも、他の女(ひと)のことも、全部忘れて。わたしだけの藤臣さんになって」


愛実は身を乗り出し、藤臣の胸に頬を当てた。
トクントクンと心臓の音が聞こえ、それは少しずつ早くなっていく。


「東京を離れるまで、毎晩、こうして付き合って欲しい。そうしたら……きっと、ひと月で何もかも忘れられると思う」


藤臣は甘えるように言うと、愛実の髪に顔を埋め、ぎゅっと抱きしめた。

愛実もそんな藤臣をしっかりと受けとめる。


「永遠に、わたしだけの王子さまでいてね」

「それは今日誓った。この命が尽きて、魂となっても、永遠に君のそばから離れない、と」

「もし、わたしが……とっても嫉妬深い奥さんになっても、嫌いにならないで」


過去は気にしない、そう言ったはずなのに。
いざ、自分自身が藤臣を知ると、同じ悦びを分け合った女性の存在が悔しくてならない。


(藤臣さんの過去も未来も、すべてを独り占めしたいなんて……)


それは、愛実の心が少女から女になった瞬間だった。


「俺は君のモノだ。だから……捨てたら、俺のほうこそ絶対に許さない」


そう言った藤臣は幼い子供のように震えて、愛実に抱きついた。
ふたりの間に隙間ができないように、愛実も彼の抱擁に力いっぱい応える。


「わたし、どんな藤臣さんも好きだから。一生、離れません」

「……愛実、愛してる……」


藤臣のキスが愛実の唇までたどり着き……


――ふたりは朝まで、愛し合う悦びを確かめあった。





~fin~

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