十八歳の花嫁

祖母よりかなり年配に思える。口元には穏やかな笑み湛えるが、どこか人を値踏みしているようなまなざしだ。


「はい。あの、失礼ですが……」

「わたくしは美馬弥生と申します。色々な事情は藤臣さんからお聞きになったでしょう?」


美馬は何も知らないといった様子で、暁や長倉弁護士に返していた。
その思惑はわからないまでも、今の愛実にとって頼りは彼だけである。

愛実はギュッと指を握り締めた。


「美馬さんの、お名前とお仕事は伺っています。……それだけです」

「――そう」


弥生は、自分の前にたった今置かれたティーカップを手に取り、口を付ける。
愛実の冷めたカップも下げられ、新しい紅茶からは白い湯気が立っていた。


「冷めないうちに召し上がれ。それとも、お紅茶はお嫌い?」

「いえ、すみません、緊張してしまって。……いただきます」


角砂糖をひとつとクリーマーからミルクを流し入れ、愛実も口に運んだ。
ダージリンの強い芳香が鼻に抜ける。ストレートで楽しむものだが、愛実はついついミルクをたっぷり入れてしまう。


「まあ、いいでしょう。わたくしはね、十六歳のときあなたのおじい様、西園寺亘さんと出会いました――」


そこから弥生の語った内容はほぼ美馬の言葉と重なった。
祖父が海軍士官として呉に行ってしまい、その間に弥生は結婚を決められたのだという。


「お孫さんが十八歳ということは……。おじい様は随分遅くにご結婚されたのね」

「祖父は、自分は家庭向きではないから結婚はしないつもりだった、と話していたことがあります。でも曽祖父が亡くなって、曾祖母に泣きつかれたとか。西園寺家を継ぐために家に戻り、祖母と結婚したと聞きました。でも、とても仲のよい祖父母で……あ、すみません」


弥生の瞳が険しくなったのに気づき、愛実は急いで謝る。

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