十八歳の花嫁
第3話 忠告
第3話 忠告
一度浮かしかけた腰を再び下ろし、愛実は尋ねる。
「あの、それはどういう意味でしょうか?」
弥生は愛実から顔を背けると、
「藤臣さんは、三女夫婦の養子なのです。亡くなった夫の薦めで、孤児の少年を養子にしたの。できれば、わたくしと、血の繋がった孫と結婚していただきたいと思っています。でも、彼にも相続権がある以上、蔑ろにはできませんからね。ただ……わたくしの“お願い”は胸に留めておいてください」
伏し目がちの『お願い』は、やけに冷ややかな口調だった。
愛実は席を立つ機会を逃してしまい……。
顔見せに、とディナーに誘われ、そのまま美馬家に残ることになった。
リビングに取り残され、愛実はそこで呆然としていた。
弥生の話はあまりに唐突だ。しかし、顧問弁護士まで出てきた以上、彼女は本気なのだろう。
それに比べて、昨日の美馬の話はどういうことだろうか。大筋は間違っていない気もするが、かなり都合のいいように端折ってある。
かつての恋人の孫である愛実と、自分の孫を結婚させ財産を継いで欲しいなんて……。
その点は美馬の言葉に嘘はなかった。
問題は――その候補者が彼を合わせて四人もいることだろうか。
美馬は『祖母の希望』『祖母が喜ぶ』といったことを盛んに口にしていた。だが肝心の祖母は、彼との結婚は本気で望んでいないようだ。
その理由が、血の繋がった孫ではないから、と。
だから、親戚という大川暁が言っていたように、美馬は『抜け駆け』をしたのだろうか?
問題は他にもある。
弥生の言うとおりなら、愛実は孫の結婚相手として望まれているだけでなく……。
そのとき、愛実の考えを中断するかのように、コンコンとドアがノックされた。
「失礼。ディナー用のワンピースを持って来たんだが。入ってもいいかな?」
それは、美馬の声だった。
一度浮かしかけた腰を再び下ろし、愛実は尋ねる。
「あの、それはどういう意味でしょうか?」
弥生は愛実から顔を背けると、
「藤臣さんは、三女夫婦の養子なのです。亡くなった夫の薦めで、孤児の少年を養子にしたの。できれば、わたくしと、血の繋がった孫と結婚していただきたいと思っています。でも、彼にも相続権がある以上、蔑ろにはできませんからね。ただ……わたくしの“お願い”は胸に留めておいてください」
伏し目がちの『お願い』は、やけに冷ややかな口調だった。
愛実は席を立つ機会を逃してしまい……。
顔見せに、とディナーに誘われ、そのまま美馬家に残ることになった。
リビングに取り残され、愛実はそこで呆然としていた。
弥生の話はあまりに唐突だ。しかし、顧問弁護士まで出てきた以上、彼女は本気なのだろう。
それに比べて、昨日の美馬の話はどういうことだろうか。大筋は間違っていない気もするが、かなり都合のいいように端折ってある。
かつての恋人の孫である愛実と、自分の孫を結婚させ財産を継いで欲しいなんて……。
その点は美馬の言葉に嘘はなかった。
問題は――その候補者が彼を合わせて四人もいることだろうか。
美馬は『祖母の希望』『祖母が喜ぶ』といったことを盛んに口にしていた。だが肝心の祖母は、彼との結婚は本気で望んでいないようだ。
その理由が、血の繋がった孫ではないから、と。
だから、親戚という大川暁が言っていたように、美馬は『抜け駆け』をしたのだろうか?
問題は他にもある。
弥生の言うとおりなら、愛実は孫の結婚相手として望まれているだけでなく……。
そのとき、愛実の考えを中断するかのように、コンコンとドアがノックされた。
「失礼。ディナー用のワンピースを持って来たんだが。入ってもいいかな?」
それは、美馬の声だった。