十八歳の花嫁
彼は三着のワンピースを手に持ち、リビングに入ってくる。
「私の趣味で選んできた。気に入ってもらえればいいが」
ピンク、イエロー、グリーンとどれも淡いパステルカラーだ。デザインは上品で可愛らしいイメージ、高校生の愛実に相応しく露出も最小限に抑えてある。
気になることと言えば、どれも値札は外してあるものの、一着で愛実の一週間分のバイト代が飛ぶだろう。
「ありがとうございます。でも、こんな高価な服は……」
「私の、というより、弥生様の命令だ。もらっておけばいい」
その声は酷く素っ気ない。
美馬の様子が変わったことに、愛実の不安は急速に膨らんで行く。
「あの、わたしはどうあってもこの家の方と結婚しなくてはならないんでしょうか?」
「今朝話したとおりだ。結婚すれば君も君の家族も救われる。もちろん、私と結婚するなら提示条件は変わらない。ただ……他の連中を選べばそうはいかないだろう」
「それは……おっしゃる意味がよく……」
愛実の頼りなげな返事に、美馬は苛々した表情を浮かべた。
「本当の結婚になる、ということだ。弥生様から聞いただろう? 相続するのは君だ。当然、自由になる金は多いさ。但し、夫に選んだ男とベッドを共にし、そいつの子供を産む。君はまだ十八だ。家族のために決めた結婚で、残りの人生を美馬の名に縛られることになるぞ」
そうなのだ。
弥生は愛実を相続人にすると言った。
昨夜も今朝も、美馬はそんなことはひと言も言わなかった。
もちろん、愛実にはもらうべきでない大金を受け取るつもりは毛頭ない。だが、善意に思えた美馬の言動がその財産目当てであるなら……。