十八歳の花嫁

信一郎は少し肩を竦めただけで、特に注意する気もないらしい。


「相変わらずいい子ちゃんだねぇ、和威は。まあそうか、誰の種かわかんない上に、母親にも捨てられたんだもんねぇ~。おばあちゃんに尻尾振って可愛がってもらわないと、住むトコもなくなるか」


笑いながら口にした宏志の言葉に、和威はいっそう色めき立った。


「だからなんだ! 貴様だって似たようなものだろうっ」

「僕は戸籍のことを言ってるんだ! 私生児のおまえらと一緒にすんなっ!」


「お黙りなさい!」


そこまで黙っていた弥生が声を荒げふたりを制した。


「愛実さんの前で、身内の恥を晒さないでちょうだい。和威さん、何を向きになってるの。……宏志さんも、和威さんのおっしゃるとおりですよ。愛実さんに謝りなさい。それができないなら、出てお行きなさい」


愛実は、弥生が宏志を快く思っていないことに気が付いた。
しかも信一郎も同じのようだ。実の弟であるのに庇う気配も見せず、知らん顔をしている。

一方、和威は自分で椅子を元に戻し、座り直した。


「失礼しました。お騒がせして申し訳ありません。愛実さんも、驚かせてすみませんでした」


和威の謝罪に、続けて宏志の言葉も待ったが……。

逆に彼は勢いよく立ち上がった。


「ハッ! 馬鹿馬鹿しい。こんな茶番に付き合ってらんないね。金目当ての赤ずきんちゃんに群がる、三十過ぎのおっさんや、口だけ立派なインポ野郎なんて……笑えるよなぁ。僕はいち抜ーけた!」


わざとらしく大声を上げ、宏志は食堂から出て行く。

和威は宏志の揶揄に激怒し、再び席を立とうとした。

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