十八歳の花嫁

第6話 表裏

第6話 表裏





「僕を気に入ってくれても、相続人にはなれないよ」


暁は面白そうに愛実に話しかける。

ふたりは、行きと同じくベンツの後部座席に並んで座っていた。


「いえ。奥様がいらっしゃるとおっしゃったので、つい……」


愛実は大川暁を指名し、その場にいた全員を驚かせたのだった。

当の暁は、愛実の返事を聞き申し訳なさそうだ。


「ああ、そうか……ごめん。見合い結婚は嘘じゃないんだ。でも、先週離婚が成立してね。だから今は独身なんだよね。送り狼が心配?」

「そんなことは……すみません」


失礼なことを言った気がして、愛実は謝った。
しかし離婚と言うことは、暁は弥生の孫娘の婿ではなかったということだ。


「いやいや、君が謝ることじゃないよ。でも、ビックリしただろう? 大丈夫?」

「はい。まだ、なんのことかよくわかってないです。大奥様……でしたっけ。どうしてわたしを相続人にしようと思われたのか……。しかも結婚なんて、四人のお孫さんがお気の毒で」


財産など要らないと言ってしまえばいいのかもしれない。
だが現実に、そんな綺麗事だけでは生きていけないのだ。

お金の苦労は愛実も嫌と言うほど知っている。
彼らが財産目的だとしても、彼女に責めることなどできない。
彼女自身がお金のために、美馬の提案に応じようとしたのだから。

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