十八歳の花嫁

第9話 来訪

第9話 来訪





瀬崎はもちろん弥生や長倉弁護士にも話してくれたようだ。口頭で約束したとおりの契約書が愛実の元に届けられた。

しかし、それを持って来たのは美馬和威だった。


「長倉先生がどうしても行けないと言われて……。でも、愛実さんが気にされてるだろうから、祖母に早く届けるようにと言われたんだ」


そう言うとバツが悪そうに和威は頭を掻いた。

藤臣と信一郎は出張中で東京都内にはいないという。宏志は和威と一緒には行きたがらず、代わりに、弥生は中立の暁に同行を命じた。

ところが、西園寺邸に着いた直後、暁の携帯に緊急連絡が入った。
暁は急遽会社に戻ることになり、愛実に挨拶だけすると帰ってしまったのである。


「えっと……僕も帰ったほうがいいですよね?」

「はあ、どうでしょうか……。でも、遠くまで来ていただいて」


愛実にはどうすればいいのかわからない。

普通であるなら、引っ越しで片付いていないとは言え、お茶くらい出すだろう。
このまま追い返していいものかどうか、和威と同じく愛実も玄関に立ったまま悩んでいた。


「まあ、美馬和威さんかしら? あなたのおばあ様から連絡がありましたのよ。大切な孫に契約書を持って行かせました、と。ほら、愛実さん、ぼんやりしてないで中にご案内して。契約書ならすぐにサインなさいな」


奥から出て来た母がそんなことを言い始める。
いつの間にそんな連絡があったのだろう。愛実には初めて耳にする話だ。


「あ、どうもはじめまして、美馬和威です。あの、差し出がましいかもしれませんが、契約書はよく内容をご覧になった上でサインなさってください。納得がいかない点は僕では説明できませんので、長倉先生に確認されてからがいいと思います」

「和威さんは真面目で誠実な方ですのねぇ。愛実も真面目な子ですのよ。おふたりは気が合うんじゃないかしら」


ホホホホホ……愛実の母は甲高い声で笑った。

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