十八歳の花嫁
優しい和威の言葉は、愛実の胸にチクチク刺さった。
お金目当てで花嫁役を引き受けるかどうか悩んでいる。そんな彼女の本心を知れば、和威は軽蔑するだろう。
藤臣に惹かれる気持ちに嘘はない。
だが、
――私には十代の少女と遊ぶ趣味はない。
藤臣はキッパリと言っていた。
「よろしく」の言葉にとても「はい」とは言えず、愛実はうつむき黙り込む。そんな彼女を和威は都合よく解釈してくれた。
「ああっと、ごめんっ! よく考えたら、婚約指輪を用意してるなんて、僕が言っちゃマズかったよね? 聞かなかったことにしてください!」
「あ……はい」
「それから、今日来たのはもうひとつ、どうしても訂正しておきたいことがあって……」
そう言うと見る間に和威は真っ赤になった。
愛実にはなんのことかわからず、じっとみつめているとしだいに耳まで赤くなる。
「あの、何か?」
「いや……この間、宏志くんが言ったことなんだけど」
美馬邸でディナーをいただいたときだろうとは思ったが、何を言ったかまでは思い出せない。
「彼は僕のことを誤解してて、でも、決してそういう理由で候補者を降りると言ってるわけじゃないから……。だから、その点だけは誤解して欲しくなくて」
和威は藤臣に比べるとかなり幼く見える。
大学生と言っても通るのではないか。
とはいえ、愛実にすればかなり年上の男性だ。その大人の男性が、額に玉のような汗を掻く姿に驚いていた。
「あの、申し訳ありませんが、わたし……」
「いえ、ですから、決して自信はありませんが……結婚できない身体と言うわけじゃありませんからっ! それだけは、ちゃんとお伝えしておきたかったんです!」
「は、はい! わかりました」
何かよくわからないまま、とりあえず返事をした愛実だった。