十八歳の花嫁
「おいっ!」
愛実は慌てた様子で衣服を整え、そのまま玄関に向かって駆け出した。
「あ、あの……すみませんっ。わたし、やっぱりできません。ごめんなさい!」
叫びながら逃げ出した愛実の腕を、美馬は飛びつくように掴む。
「待て」
「いやっ! 離して……お願いします」
「そうじゃない! 下に警察が来てるんだ」
“警察”の言葉に、愛実の動きは止まった。
目を見開き、困惑した表情で美馬を見上げている。そのままゆっくりと彼女の拘束を解いた。
「そ、それって……どういう」
「どうもこうもない。さっきまで一緒だった同僚が知らせてくれた。君に断わられた男の嫌がらせかもしれんな」
美馬はさりげなく、警察が踏み込むのは愛実のせいだ、と刷り込む。
「で、でも……何もしてないのに」
「こういったホテルに入るだけで充分だ。売春容疑で逮捕されたら、高校は間違いなく退学だな。それに、親に知れるぞ」
親のことを言われたら大概の子供は青褪めるものだ。だが、彼女は落ち着いた表情で小さく首を振った。
「高校はもう、辞めて働くつもりですから。それに母は……」
そこまで言い、愛実はハッと顔を上げる。
「あなたは? あなたはどうなるんですか? 捕まったら……会社をクビになったりしませんか?」
「君が高校生なら児童買春扱いで実刑だな」
美馬は愛実を試すつもりで大袈裟な言葉を口にする。