十八歳の花嫁
女はすべて強欲な詐欺師だ。
利用される前に、利用しなければならない。少しでも気を許せば、死ぬまで金を搾り取られることになる。
それは、三十年弱の人生で藤臣が学んだ教訓である。
彼は心に浮かんだ愛実の顔を懸命に振り払う。
「黙れ! 俺に礼なんか言うなっ!」
藤臣の叫びを打ち消すように、携帯が鳴った。
瀬崎が場所を特定したに違いない。急いで車を路肩に停め、通話ボタンを押す。
『瀬崎、場所はどこだっ』
『随分焦ってるじゃないか。真面目な秘書くんじゃなくて悪いね』
電話の相手は暁だった。藤臣は深呼吸をすると、
『すみません。今、取り込んでまして……急用でなければ明日かけ直しますので』
そう言って切ろうとした。
『おいおい、いいのかい? 僕は、ある男がモーテルの部屋を予約するのを聞いたんだけどな』
その言葉に、藤臣の呼吸が止まる。
『今からなら……終わるころには間に合うさ。信一郎くんも馬鹿な真似をしたもんだ。君もそのつもりで計画してたんだろう? でなきゃ、簡単に奪われるわけがない。ま、ウブなお嬢さんには気の毒だが、これもいい勉強に』
『どこだ。答えろ』
暁を遮り、藤臣は強い口調で尋ねた。
『どうしたんだ? おまえさんらしくないじゃないか。餌は有効に利用するのが上策だろう?』
『――さっさと言え! あの娘は俺のものだ。俺が見つけたんだ……俺が』
暁は『これは“貸し”だ』と前置きし、藤臣が予測したうちの一軒の名前を口にした。