十八歳の花嫁
第3章 誓いの指輪

第1話 流言

第3章 誓いの指輪





第1話 流言





「藤臣さん、聞きましたか?」


事件から四日後、藤臣も四日ぶりに美馬邸に戻った。
彼が私室に入り、デスクに座るなり飛び込んできたのが和威だ。そして興奮した様子で話しかけてくる。


「どうしたんだ。落ちついて話せ」

「ここ数日、信一郎さんを見なかったんですが……実は入院してるらしいんです。なんでも、暴漢に襲われたとか」


和威は声を潜める。


「暴漢? それは気の毒だな、どこで襲われたんだ?」


しれっとした顔で、藤臣は言い返した。


「いえ、それが……よくわからないんです。警察にも届けてないらしくて。噂だと、ヤクザの情婦に手を出して、色々やってるところに乗り込まれて酷い目に遭わされた、とか。入院も極秘扱いみたいですよ」


(なるほど、俺はヤクザなわけか……)


真剣な和威に合わせて、藤臣も深刻そうにうなずく。
その一方、手で口元を覆い、苦笑を隠した。

和威はそれを、藤臣も本気で考え込んでいると誤解したらしい。


「まあ、いい薬ですよ。気に入った女性は恋人や婚約者がいても、かなり強引にモノにする、という噂ですから。いつか、痛い目を見ると思ってたんです」

「奴のことはいいさ。自分が痛い目を見ないように気をつけろよ」

「僕はそんな、藤臣さんほどモテませんから。第一、覚えなきゃならない仕事がたくさんあって、女性と付き合ってる暇なんかないです」

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