十八歳の花嫁
藤臣の忠告に和威はソファに座りながら答えた。
和威は宏志から言われたことを気にしている。下半身についての揶揄だが、藤臣はそれに気づき、遠回しに切り出した。
「愛実に聞いたよ。熱心に否定していたが、なんのことかわからなかったと言っていた」
藤臣の言葉に、和威はホッとしたような、残念そうな、微妙な表情をした。
「そうですか……でも、会いに行ったのは祖母と母の命令ですから。藤臣さんは、本当に愛実さんと結婚されるつもりなんですよね?」
念を押すような和威の言葉に、藤臣は怪訝そうに顔を顰めた。
「不満か? だったら、降りる必要はない。ただ、目的は財産か愛実か、はっきりさせておいてくれ」
「暁さんから聞いたんです。この間の出張、いつものモデルが同伴だった、と」
和威の口調は藤臣の不貞を責めていた。
スイートルームに久美子と一緒に泊まったことが、写真週刊誌に掲載されるところだった。
印刷前に掲載をやめさせ、写真はすべて回収済みだ。
持ち込んだのはフリーのカメラマンだというが……。
その写真の存在を教えてくれたのは愛実だった。
信一郎は彼女を呼び出し、藤臣は女性同伴で香港に出張した、と匂わせた。愛実に久美子の写真を見せ『藤臣が結婚を約束した女性』と説明したのだ。
それが間違いだと、必死で言い訳をしたのは初めてのことだろう。しかも、十八歳の少女相手に。
「てっきり、そういった女性関係は清算されたとばかり思っていたので……。愛実さんは、遊びでどうこうされる方じゃないと思うんです。だから藤臣さんも」
「おまえには関係のない話だ」
デスクでキーボードを打ちながら話していたのをやめ、藤臣は立ち上がった。