十八歳の花嫁

信一郎は美馬邸とは別に都内にマンションを所有している。
他にも至るところに別荘があり、ハワイにはコンドミニアムもあるらしい。
学生の宏志ですら勉強用と称して他に部屋を持っていた。

一方、藤臣は『管理が面倒だ』と言い、別荘はおろか賃貸マンションすら借りていない。

例のモデルにはマンションを買い与えたと、数ヶ月前の週刊誌に載っていたが……。

そのことを藤臣に尋ねたとき、

『ホテル以外では抱かない。女は信用できないからな』

それは、肯定とも否定とも取れる返事だった。


二階の廊下に立ち、和威は自分の部屋に向かう。
位置的には、藤臣の部屋の真下だ。入ってすぐにリビングがあり、奥の寝室にはバスルームとトイレがついている。

藤臣のリビングは書斎代わりで、いつも山のように仕事を持ち帰っていた。
女性を家に連れて来ることもなく、仕事以外では外泊も旅行もしない。

和威が

『たまには女性とのんびりして来たら?』

と言うと、

『必要ない。セックスは一時間もあれば終わる』

そんなにべもない言葉を返された。


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