十八歳の花嫁
「それから、言い忘れていたが。君の実家には、子供たちの面倒を見るべく家政婦を雇った。引っ越しに伴う各種手続きは瀬崎がすべて完了した。三日ほど学校に行けなかったようだが、昨日からちゃんと近くの公立学校に通っている」
藤臣が家族の様子を話した途端、愛実の目が輝いた。
つくづく、この少女は家族が大事なのだと思い知らされる。
藤臣が仕事でいない昼間、隣の遊園地で遊べばいい、と用意したパスポートも使おうとしない。
「慎也は一度も来た事がないんです。傷がよくなってから、一緒に連れて来てやってもいいですか?」
それはそれとしてまた用意する、今は君が楽しめばいいと伝えても、「わたしひとりでは楽しめない」と言うのだ。
美味しそうにハヤシライスを食べる彼女の口元をみつめつつ……。
唇についたソースを舌先でペロリと舐め取ったとき、彼の背筋が痺れた。
微量な電流に身体を貫かれた気分だ。途端に息が上がり、スラックスの前が窮屈に感じ始める。
藤臣は目を閉じ、口元を押さえ、何度か息を吐く。
「あの……わたしが一緒だと寛げませんよね? 部屋に戻ってひとりで食べても」
「違うんだ! あ、いや、とにかくそうじゃない。仕事で色々考えることがあって、だから君のせいじゃないんだ」
(クソッ! わざわざ久美子をホテルに呼び出し、抱いて来たのに。どうしてこうなるんだ!)
これまでは週に一度、多くて二度……仕事が忙しい時期は数ヶ月セックスなしでも平気だった。
それが、この愛実にだけは出会った夜から下半身が顕著に反応する。
愛実は確実に藤臣のほうを見ている。
最初の計画どおり、『君と本当の夫婦になりたい』そう言って“愛”という言葉を使えば、今夜にも彼女は藤臣のものになるだろう。
だが……。