勇気を出して、空を見上げて。

悩ませたいわけじゃ、なかった。


こんな風に家を飛び出すつもりなんて、なかった。


きっと傷つけてる。


その事実に、また俺が傷つく。


どうしたら、分かってくれるだろうか。ちゃんと夏までに分かってもらえるだろうか。


そうしなきゃいけない。


でも。


やっぱり、どうすればいいのか分からない。


あの体験があってから、壊れたのは俺だけじゃないのかもしれない。


知らず知らずのうちに、他のなにかも壊していたのかも。


────今それに気付いたところで、今更、以外の何物でもないけど。


「……ごめん……」


何度だって、謝るよ。


そのくらい、何度だって。分かってもらえるなら、何度だって。


切り捨てたいわけじゃ、ないから。


三人にとって一番いい道を、俺は探したいと思ってる。


「っ、ごめん……」


そのためには、やっぱりなかったことにしなきゃいけないのかな。


あの体験があるから、ここまで拗れてしまっている。


だったらやっぱり、あの体験をなかったことにすれば全部上手くいくのかな。


「ご、めん……」


きっと、無理だ。


ただ助けたいだけ。ただなりたいだけ。


ただ、信じたいだけ。


何に? そう問われても、俺は答えられないけど。


雨が降ってきた。傘を持ってない俺は、その雨粒を直に受け止める。


涙。


俺、泣いてるのかもしれない。


俺の泣けない代わりに、空が、って。それはちょっと痛いかな。


まるで、慰められてるみたいだ。
 

道の途中で唐突に歩みを止める。傘を差した人達が、迷惑そうに俺を避けていく。


慰めなんて、いらない。


屋根の下に駆け込んだ。慰めはいらない。慰められる権利なんてない。


母さんを泣かせた、俺には。


「────ごめん」


望むことは、ただ一つ。




────俺は、誰かを信じてみたい。

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