勇気を出して、空を見上げて。
「あははっ、ホントに言った!」
「うるさい黙って」
「はいはいお姫様」
妹じゃなかったの、という言葉は呑みこんだ。
下手にこれ以上何か口にするのは得策じゃない。
別に、どっちだっていいんだから。
一緒にいるのは利害関係が一致しているからってだけで、離れたところであたしには他にも、いる。
そしてそれはきっと相手も。
「何見てるの?」
黙って映っていく外の景色を眺めていると、笑いを孕んだ声がした。
もうすぐ着くよ、と声をかけられ、ふうんと気のない返事を返す。
くつくつと今度は声を出して笑われて、むっとして運転席を睨んだ。
「うるさい」
「くくっ……ごめんごめん。ココって猫みたいだよね」
「何の話」
「いや、何となく? 思ったから?」
「……あっそ」
怒らないんだ、と言いたげに相手の眉が上がった。
「猫は、好き」
「へーえ?」
「何その反応」
「俺は?」
「……黙れば?」
笑顔でそう返して、また窓の外に目を向ける。
と、タイミングよくというか、車が駐車場に滑り込んだ。停止した車から降りずにいると、綺麗な手が目の前に差し出される。
「お手をどうぞ、お姫様?」
「……兄妹はどこに行ったの」
とうとう口に出して、あたしはその手を無視して車を降りた。
慣れたように建物の中に入ると、あたしの後をこれまた慣れたように相手が追いかけてくる。
手続きを済ませて部屋に向かうと、入るなり即ベッドに押し倒された。
「相変わらず」
「悪い?」
「……んーん?」
「そういうの、嫌いじゃない」
寧ろそそる、かな。
あっそ、と興味なさげな声を出した。それをまた楽しそうに笑ってやり過ごして、相手はあたしの手をまとめ上げる。
────嫌いだ、と思う。
「なに?」
────嫌い、大嫌い。