勇気を出して、空を見上げて。
息を切らしながら、でも懲りずに話を続けて四階へ。左に曲がって突き当り。
電気の点いていない部屋に嫌な予感を覚えつつ、先に立った私が視聴覚室のドアに手をかけると、嫌な予感を吹っ切るように思い切りドアノブを引いた。
────ガチャン、
「やっぱり?」
「開いてないねえ」
「まだ時間あるしなあ」
どうやらまだ早かったらしい。
時刻は八時三十五分、課外開始時刻まではあと二十五分。
どうやらフライングだったらしい。
廊下の窓を開け放し、壁に背を向けて二人並んで壁に背を預け、ずるずると座り込む。
仕方ない、待つしかない。
部室に行ってもいいが、それには微妙な時間だ。課外が始まるのは九時。ここから部室まではお世辞にも近いとは言えない。
職員室に先生を呼びに行くにも、やっぱり近いわけでもないので気が引ける。というか、これ以上疲れたくない。これから三時間ぶっ通しで課外受けるのに。
そのままさっちーと他愛もない話を続けて、先生を待つことにした。
さっちーからも提案が出てこないのは、私と同じことを考えていたのかそもそも考える余裕もないくらい疲れ切っているのか。
なんとなしに話をしていると、ふと頭の隅を過るものがあって。なんだろう、と一瞬考えてすぐに思い出した。
そうだ、言わなきゃいけないことがあったんだった。
「さっちー」
「どうした唐突に」
「私木曜課外休むー。から、プリント貰っといてくんね?」
「あーオーキャンだっけ?」
「うんそうー」
大学の、オープンキャンパス。
まだ高一で、早いと思われるかもしれないけど。進学校のこの高校からしたら意外と当たり前だったりする。
とはいっても、みんながみんな行くわけじゃないんだけど。私はちょっと興味があるところがあったから、申し込んでみたのだ。
できたらやってみたい、と思っているだけだからそこまで本気というわけでもないのだけれど。
一人旅がしたい、というのがなくもない。
その大学は同じ県内だけれど、家から行くとしたら二時間近くかかるからちょっとした一人旅だ。
「そっかーいってらっしゃーい」
「おう、行ってくる」
「あ、ごめんねー!」
と、漸く先生の登場。
その頃にはちらほらと生徒が来ていた。時間は八時四十一分、いるのは見たところチャリ通民だ。