勇気を出して、空を見上げて。
「安定」
「ちゃんと聞きなよー」
「聞くわ! 寝そうなさっちーに言われたくないし!」
「否定できない」
「それ詩月もだわ」
課外は午前の三時間。科目は英語。先生は普段授業を教えてもらっている他のクラスの担任教師。
英語は苦手だけど、先生の授業は好きだ。それに普段の授業がオールイングリッシュな分、課外での日本語は新鮮で。
まあだからといって小説を書かない理由にはならないんだけど。
寧ろ普段の授業の方がついていけなくなるから書いていない。
そして十二時きっかりに課外は終わり、私とさっちーは詩月を連れて文芸部室へと向かった。
課外中、結局二人ともところどころ寝落ちしていたが。
「え、詩月行っていいの?」
「まあいーんじゃない?」
「文芸部そんなんだから」
「来る者拒まず去る者追わず」
「だから正規仮入部員なんて制度があるんだよねー」
「それ公式?」
「いや非公式」
お昼を食べる場所を求めての移動。
視聴覚室は飲食禁止、各教室は鍵が閉まっていて空いておらず、食べるなら渡り廊下でジベタリアンか図書室の前の机で食べるか、もしくは各部室へ行くか。
この三択なら部室に行かない手はない。
ちなみにジベタリアンというのは、床に座って何かする人のこと、だと思う。
基本的に様々な人が出入りしている文芸部は、たとえ一年だろうと変わらない。
結構みんな色々連れてきていたりするし、先輩方もそうだ。
それも三年の先輩に二人、正規仮入部員とか言って正式な部員じゃないけど部員より入り浸っている先輩がいるからかもしれない。
ただ、文芸部は生徒から敬遠される傾向にあるので、余程じゃない限り連れてくることはないが。
今回は昼飯の食べる場所に困ったからだ。
「おー人いる」
「おかん、さっちー」
「もう一人いるんだけどいい?」
「おーいいよー」
「ちょっと場所空ける。ウチそっち行くわ」
「詩月、いいよー」
文芸部の部室にかかっている暖簾をかき分けると、左端を壁にくっつけた机には二人が座っていた。
しーふとまおー。本名村瀬冬佳と藤野茉佑。
二人ともれっきとした文芸部員で、まおーが小説、しーふが絵描きだ。