勇気を出して、空を見上げて。
「布教って」
「布教! だって面白い小説いっぱいあるんだよ!?」
「はいはい、おかんは小説のことになるとテンションあがるよね」
「当ったり前!」
「二回目」
「大切な事なので二回言いました」
ぶはっと詩月が吹き出した。そこまで笑わなくてもいいと思うんだけど。
ハナちゃんもハナちゃんで笑ってるし。失礼だね。
「おかん家に何冊くらいあるの?」
「えー? 家にはあんまないんじゃない? 百とか」
「百って十分だと思うけど……?」
「盛った、かも。数えたことないからなー。これからどんどん増やすし」
「高校三年間で何冊増えるか見ものだね」
「結構借りて読んでたから、読書量の割には持ってないよ」
「それなら正しいと思う」
なら納得だわ、と二人が頷き、私はその納得の仕方に笑った。
大体他人が何冊くらい持ってるかなんて知らないから相場なんて分かる訳がない。
私だってちゃんと本を買うようになったのなんて高校に入ってからだから、実質二ヶ月とそこらだ。中学時代は小遣いなんてなかったから欲しくたって買えない。
最近やっと駅に本屋が出来た。ずっと改装工事中で早く開店しないかなと待ってた。
小遣い全額本に費やすつもりでいる。それくらいに、小説を読むのが好きだ。
「放課後何すんだろうなー」
「ね。初めてだから分かんないよね」
「生徒会候補生ー」
「まだ生徒会じゃないから分からないよ!?」
「知ってる」
今週末にある生徒総会。そこで生徒会の役員選出がある。
既に立候補は終わっている状態で、ハナちゃんは書記候補だ。定員は二名で二人しか出てないから、信任になる。
つまりほぼ生徒会役員になるのは確定だ。
「ま、もう一人は役に立たないから」
「さっちーかわいそうだよね」
「そのためのおかんでしょ」
「君たちは私のことを何と思ってるのかね?」
「え、おかんじゃん」
「おかんでしょ」
さっきも聞いたセリフだ。
まあいっか、と笑って流した。そう言われることは嫌じゃない。
「てかそろそろ時間だよ」
「え。あ、ほんとじゃん」
「はーい席着いてー」
「先生なんてタイミング」