勇気を出して、空を見上げて。


最終的には、どうなってもいいや、なんて。


星にばれたら怒られるかな。嗚呼、ユズにも。話は確実に回るだろうから、仁にも湊くんにも、双子にもきっと。


あ、言質取ったこと二人に伝えておかないと。


あたしの体調が戻ったあと、星と仁に容赦なく怒られ、湊くんにも笑顔でとことん諭された。大和さんと双子は何も言わなかったけど、怒ってるんだろうな、ってのは分かるに決まってる。


心配なんだよ、とその様子を見ていたユズは苦笑しながら言っていた。みんなあたしを心配しているから色々言ってくるんだと。勿論俺もだけど、と最後に付け足して。


分からなくも、ない。あそこには、あたしよりも年下の子だっている。そういう子のことはあたしだって心配だし、心音ちゃんという存在だってできた。あの子たちが無茶をしていたら、あたしだって怒る。


でも。あたしに、心配される価値なんて。


あの子たちには心配される価値がある。あたしだって心配するし、怒るし、元気にしていたらよかったって安心する。


だけどあたしには。


そう頑なになってしまうのは、解りたくないと思っているからだ。分からなくはない。あたしだって持っている気持ちだから。あの子たちがあたしと同じことを言うなら、真っ向から否定しなきゃと思うくらいだから、多分分かってはいる。


でも、解りたくはない。


きっと、それがあたしの正直な気持ちだ。


だからあたしは、分からないふりをしてまたあの家を出ていく。


それが一番いい。あたしなんかに構う時間があるのなら、もっと他の子たちに構ってあげてほしい。


あたしのことなんてどうでもいいから。もう放っておいて。あたしはあの子たちと違って、一人でも生きていけるから。


優しくされたら、あたしは独りでは生きていけなくなる。


そうしたら多分、あたしはもうあたしではいられない。


今だって、独りで生きているのかと訊かれたらそうじゃないと言うしかないけれど。結局あたしは、独りになんてなることのできない弱虫な臆病者なんだ。


「……ざき? 田崎?」

「……え、あ、ごめん」

「どっかわかんないの? どこよ?」

「んーとねー、今のとこ大丈夫そう。ごめん」

「いや、大丈夫ならいいんだけど」


生徒会長に声を掛けられて、はっと我に返った。考え込んでしまっていたらしい。


笑顔で煙に巻いて、さらっと躱す。そ、と大した興味もなくあたしから離れて行ってくれた会長に、内心安堵の溜め息を吐いた。


これもきっと星のせいだ、と心の中で責任転嫁をして。あたしはシャーペンを握り直すとノートに解法を書き始めた。


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