一生の意気地無し。
プロローグ。
「ねぇ…、私、意気地無し?」
そう、お前は泣くのを我慢して聞いてきた。そんな顔すんなよ、お前はバカやって笑う奴だろ?
目に涙を溜めるお前に、どんな声をかければいいか分からないまま、お前の長くサラサラの髪の毛を撫でた。
「大丈夫、お前は意気地無しじゃねぇよ。」
そう、俺みたいに。お前は、意気地無しじゃない。俺は今、どんな顔してこいつを見ているんだろう。
「晴れてるなぁ。」
部活をしている奴らが砂ぼこりをたてながら、全力で走っている。俺は泣きそうになったのを誤魔化すように、空を見るふりをした。
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