双子の御曹司

彼女に会って数日後、稔が、友達の誕生プレゼントを買いに行くと聞いた俺は、勝士に「俺が連れて行くよ!」と頼まれもしていないのに、思わず言っていた。

それは彼女にもう一度会って、確かめたかったからだ。

昔から勝司と俺はいつも見間違われた。

学生時代から勝士と義姉の優里は付き合っていて、デートしてるのを、俺と見間違われた事は数えきれない。

『他の女と歩いてたでしょ!?』

『それ俺じゃないから!』

『あの女はだれ?』

『だから違うって!!』

いくら双子の兄貴で、俺じゃないと説明しても信じてもらえず、俺が浮気をしたとか、ヒステリーを起こした女は一人や二人じゃない。

俺は本当にうんざりしていた。

なぜ俺と勝士を見分けられないのか?

好きなら分かって欲しい。
信じて欲しい…
優里のように…

優里は俺達を一度も間違えたことはない。
優里は『幼稚園からの付き合いだから』と言うが、それだけじゃないと思う。
勝士の事は羨ましいと思うが、優里の事は幼馴染以上の気持ちはない。
ただ、優里の様に勝士ではなく、俺を見てくれる女(ひと)がほしい。

そんな事もあり、俺はいつの間にか本気で恋愛する事が出来なくなっていた。

このまま1人でいいとさえ思っていた。

だが、彼女はひと目で俺達を見分けた。

そんな彼女にもう一度合ってみたい。

また、勝士ではなく、俺だと分かってくれるだろうか?

「試してみるか?」

俺は勝士と見分けがつくようにと、かけ始めた伊達メガネを外しカラコンで、瞳を黒くして、髪はスプレーで黒くし髪型も分け目を少し斜めにして後ろに流す。

仕事以外普段は、ほとんどGパンだが、勝士の様にスーツを着る。

鏡に映る自分を見て、フンと鼻で笑い、「勝士だな…」と呟く。





< 10 / 114 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop