双子の御曹司
彼女に会って数日後、稔が、友達の誕生プレゼントを買いに行くと聞いた俺は、勝士に「俺が連れて行くよ!」と頼まれもしていないのに、思わず言っていた。
それは彼女にもう一度会って、確かめたかったからだ。
昔から勝司と俺はいつも見間違われた。
学生時代から勝士と義姉の優里は付き合っていて、デートしてるのを、俺と見間違われた事は数えきれない。
『他の女と歩いてたでしょ!?』
『それ俺じゃないから!』
『あの女はだれ?』
『だから違うって!!』
いくら双子の兄貴で、俺じゃないと説明しても信じてもらえず、俺が浮気をしたとか、ヒステリーを起こした女は一人や二人じゃない。
俺は本当にうんざりしていた。
なぜ俺と勝士を見分けられないのか?
好きなら分かって欲しい。
信じて欲しい…
優里のように…
優里は俺達を一度も間違えたことはない。
優里は『幼稚園からの付き合いだから』と言うが、それだけじゃないと思う。
勝士の事は羨ましいと思うが、優里の事は幼馴染以上の気持ちはない。
ただ、優里の様に勝士ではなく、俺を見てくれる女(ひと)がほしい。
そんな事もあり、俺はいつの間にか本気で恋愛する事が出来なくなっていた。
このまま1人でいいとさえ思っていた。
だが、彼女はひと目で俺達を見分けた。
そんな彼女にもう一度合ってみたい。
また、勝士ではなく、俺だと分かってくれるだろうか?
「試してみるか?」
俺は勝士と見分けがつくようにと、かけ始めた伊達メガネを外しカラコンで、瞳を黒くして、髪はスプレーで黒くし髪型も分け目を少し斜めにして後ろに流す。
仕事以外普段は、ほとんどGパンだが、勝士の様にスーツを着る。
鏡に映る自分を見て、フンと鼻で笑い、「勝士だな…」と呟く。