双子の御曹司
「勝士どうした?」
『稔と、遥さんが事故にあった!』
「何だって!? 遥は無事なのか? 稔は?」
『今、優里から電話があって、優里も動揺していて良くわからない。 俺も、今から病院に行く!』
「分かった、俺もすぐ行く!」
慌てて部屋を出ると、秘書の溝口が俺のただならぬ顔を見て察したようで、「すぐに車の手配をします」と言う。
足早にエレベーターに向かう俺に、付き添いながら、溝口は電話をかけた。
「頼む。…今日の午後からの視察だが…」
「はい、今日、明日の予定は、全てキャンセルしておきます。その後の事は、後ほどご連絡下さい。」
「ありがとう…。」
エレベーターを降りると、玄関には車が着けられていた。
病院に着くと、先に着いていた勝士が待っていた。
「遥は? 稔は!?」
「遥さんは、処置室だそうだ。 検査もあるからまだ会えないらしい…。 稔は遥さんのお陰で怪我一つ無いが、念の為、検査をしている。」
「そうか…」
「竜仁すまない…。 稔が道路に飛び出したらしい…。遥さんが助けてくれなかったら稔は…。」
勝士の手が震えていた。
「稔が、無事でよかった。 遥も大丈夫だ!」
最後の言葉は自分に言っていた。
検査も終わり命に別状ないが、流産したと医者に聞かされた。
病室のベットに眠っている遥の手を握る。
「遥? どうして妊娠の事、教えてくれなかったんだ?…」
俺は、駆けつけた遥の両親に、心配ない事を伝え、溝口には、暫く遥に付き添う事を伝え、書類関係を病室に持って来てもらった。
親父にもフォローを頼んだ。
遥はなかなか意識が戻らず、俺は心配で仕事も手につかなかった。
遥の手を握っていると遥が指を動かした。