双子の御曹司
勝士の家に稔を迎えに行き、玄関の扉を開ければ、優里が迎えてくれた。
「あら? たっちゃんその格好どうしたの?」
やっぱり優里には分かるよな?
「あぁちょっとね…?」と俺は苦笑して答える。
そこへ奥から稔が走って来る。
「あれパパ、お仕事終わったの?」
やっぱり稔にはまだ分からないらしい。
「こら! 稔、走っちゃダメだろ!!」
「ごめんなさい…。」
「稔、俺だよ!」と微笑むと
「えっ? たっちゃん?」
稔は目を丸くして驚いている。
彼女は分かってくれるだろうか?
少し期待をして稔と二人で出かけた。
いつも病院の帰りに来ていたので、日にちを置かずに訪れた事で稔の体調が悪くなったのかと彼女は顔を曇らせている。
彼女が本気で、稔を心配してくれてる事がわかる。
彼女と稔の会話の中に
「今日も伯父さんと一緒なんだね?」と、俺の事が出てきた。
彼女から期待通りの言葉が聞けて、俺は嬉しくて頬が緩む。
そんな時、稔が小声で彼女に話している内容が、俺の耳にも聞こえて来て、俺は恥ずかしくて、視線をそらし聞こえてないふりをする。
すると彼女から思いもよらない言葉が…
「いらっしゃいませ。たっちゃん?」
たったっちゃん??…
俺は驚き呆然と立ち尽くしていた。
顔が熱い。顔が赤くなっていくのが自分でも分かった。
彼女は俺の驚きを見て、まずいと思った様だ。
すると彼女は「すいません。ふざけすぎました。」と肩をすくめ頭を下げ微笑した。
そんな彼女を見て俺の胸がドックンと跳ねた。
あ…彼女が欲しい…俺のものにしたい。
もう何年も忘れていた、この気持ち…
稔を家に送り届けた時、勝士に彼女の事、自分の気持ちを話す事にした。
「俺が勝士じゃないって、見分けてくれた子が居たんだよね…。」
「へぇー竜仁が女の話するなんて珍しいな?」
「そうだなぁ……菱川屋のおもちゃ売り場の子なんだけどさぁ…?」
「あぁあの子良い子だよな? 稔の事も気にかけてくれるよ?」
「そぅだなぁ。」
俺が女の人の話をするのは久しぶりだった。
もう何年もしていないと思う。
そんな俺が、勝士に彼女の話を自然にしていた。