双子の御曹司

お店に入ると、和服を着た品のあるスタッフに奥の個室に案内される。

襖を開け部屋に入ると、一人の男性が、背を向け中庭を見て立っていた。

瞳さんが「お待たせをして、すいません。」と声をかけると、見合い相手だろう男性は、振り返り「いいえ。」とニッコリ微笑む。

私はその彼を見て呆然と立ち尽くす。

伊月のおじさんは、私の様子を見て「どうした?」と私の顔を覗く。

私は首を振り、私を真ん中に、私達3人並んで座る。

彼は、伊月のおじさんの向に座り「今日はお時間を頂き有難うございます。」とお辞儀をする。

「遥ちゃん、こちら西園寺さんは、こちらのホテルで…」

「ちょっと待って下さい!」

瞳さんは西園寺さんを紹介し始めたが私はそれを遮り尋ねる。

「西園寺さんは、ご結婚されてますよね?」

私の言葉に付き添いの2人は驚いていた。

そりゃー驚くだろう。
私も見合い相手に、凄く驚いている。

そこに居たのは、稔くんのお父さんの西園寺勝士さんだった。

「どういう事だ!?」と伊月のおじさんが瞳さんに鬼の形相で聞く。

瞳さんは、何が何だか変わらないようで、おどおどしている。
多分、瞳さんも相手が妻帯者なんて知らなかったのだろう。
知っていれば、見合い話なんて持ってこなかった筈だ。

暫くの沈黙後、西園寺さんが口を開いた。

「やはり遥さんは騙せませんね?」とニッコリ笑う。

「どういう事でしょ?」伊月のおじさんが西園寺さんを睨みつける。

鬼瓦の鬼の形相だ!

「失礼しました。今日の見合い相手は、双子の弟で竜仁なんですが、少し仕事でトラブルがおきまして、遅れておれます。もう暫くお待ちいただけないでしょうか?」と頭をさげた。

え?双子の弟…
私のお見合いの相手は、西園寺竜仁さん…?

瞳さんも双子だとは知らなかったようで、驚いていたが「そう言う事なら先にお食事をして待ちましょう?」と伊月のおじさんが言い、食事を運んでもらう事にした。

見るからに高そうな器に、品良く盛られたお料理は、とても美味しく、和やかに時間が過ぎた。



< 33 / 114 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop