双子の御曹司

竜仁 Side


高校時代からの友人と飲んだ帰り、K駅からタクシーに乗り込もうとしたら、彼女が目に入り思わず「ご一緒しましょう?」と声を掛けていた。

彼女は突然のことで戸惑っていたが、周りの目が気になってか、タクシーに乗り込んでくれた。

彼女は初めは緊張していたようだが、稔の話をしてからは緊張も緩み、会話も弾んでいたと思う。

彼女の自宅に着きタクシーを降りた際「じゃ、水曜日」と声を掛けたが、彼女は俺とお見合いをする事は知らないらしく、特に反応は無かった。

俺はお見合の時、彼女がどんな顔をするか楽しみで仕方がない。

お見合いの当日、付き添いを頼んでいた勝士と、俺が務めるホテルのロビーで待ち合わせをしていた。

今朝は、早く眼が覚め、彼女に逢える喜びから、待ち合わせの1時間も前に来ていた。

まるで遠足が楽しみで、親に起こされる前に起きる小学生だ。
「俺はガキか?」と、自分にツッコミをいれたくなった。

その時ブライダルスタッフが尋常じゃない顔でスタッフルームに入って行くのが目に入った。

気になって聞いてみると、なんでも2日後の披露宴の引き出物のワインが、まだ入荷していないと慌てていたのだ。

俺は放っておく事も出来ず、状況確認をする為に担当者に話を聞くと、取引業者に注文書が届いていなかったと、言う。

本来ならFAXした後、電話確認する事になっているが、確認を怠っていたようだ。

マニュアルの徹底を支持しなければいけないが、今はそんな事を言っている場合ではない。
すぐに勝士に連絡を入れ、事情を説明し、先に見合いの席に行き、お詫びをしてくれるように頼んだ。

ワインは1つの業者では数が揃わず、3つの業者から商品をかき集める事になった。
これでは、のし紙の書体や包装紙がまちまちの場合がある。仕方ないこちらでしなくては…手の空いてるスタッフに商品を取りに行かせ、のし紙の印刷は当方でした。

商品の到着次第、包装すれば、問題ない。俺はスタッフに支持を出した。

商品が到着したら、知らせるように言って、お見合い場所に向かう。

料理店スタッフに部屋を聞き、部屋の前で深呼吸して襖を開ける。

部屋へ入り「大変遅くなって申し訳ありません。」と頭をさげる。
遥さんの付き添いである、伊月さんの御主人から頭をあげるように言われ、上げれば、遥さんの振り袖姿に目を奪われてしまった。

遥さん…綺麗だ……

勝士が紹介したあと、俺は遥さんに一目惚れをした事などを話して、お付き合いをして欲しいとお願いをした。

遥さんが俺の申し出を受けてくれるか心配だった。これは、俺にとって最初で最後の賭けだった。

どうする? もし、彼女から断られてしまったら…
だが、俺は遥さんを諦めたくない。

遥さんは困惑していたものの付き添いの伊月さんの勧めもあり承諾してくれた。

俺はほっと撫で下ろした。

本当なら二人でもう少し話をしたかったが、先程の引き出物の事が気になる。

数が数だけに、包装する時間もかかるし、スタッフだけに任せる事は出来ず、遥さんとは連絡先を交換してその日は別れた。




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