双子の御曹司
やっぱり御曹司…
今日は、月に一度のチーフ会議がある為、早番で出勤だった。
なんだか体が怠い…
昨日のお見合い相手が、稔くんの伯父さんだった事や、その彼が西園寺グループの御曹子で、私に一目惚れをしたと聞いて信じられなくて、朝方まで眠る事が出来なかった。
会議中もボーッとしていたらしく、凪紗に声を掛けられるまで、会議が終わった事もわからなかった。
「るか…遥!?」
「え?」
「どうしたの? ボーッとして体調悪いの?」
「大丈夫。 ちょっと寝不足かな?」
「顔色悪いよ? ホント大丈夫?」
「うん。」
2人で、そのまま会議を行っていた、食堂を出た。
「ねぇ昨日見合いしたらしいじゃん?」
「ど、どうして知ってるの?」
私は、目を丸くして聞く。
凪沙は、ニヤニヤして早く話せと、肘で突っついて来た。
あっ麗華ちゃんだな?…
内緒にしてって言ったのに…
ひとの口に、戸は立てられないってホントだわ…
「ハァ…あとで話すよ…」
ため息を漏らして、私は、売り場へと向かった。
朝から雨のためお客様の入りも悪い。
「チーフ、13回目ですよ!」と、佐野さんが言う。
「えっ何が?」
「さっきから溜息だばかり付いてますよ?」
「そうだった? ごめんなさい。ハァ…」
言ったそばから溜息が出てしまった。
「なにかありました?」
「いえ…なにもないです。」
あっそろそろ夏休みのシフトを作らないと?
「佐野さん、夏休みどうします?」
「今年は娘も部活や合宿でほとんど居ないから、通常のシフトで良いわ?」
佐野さんは土日も出勤してくれるから、本当助かる。
「でもお盆は、ご主人の実家に帰られるんですよね?」
「ううん。今年は帰らないの! 主人の両親、海外旅行に行くんですって! ラッキーだったわ!」
ブイサインして喜ぶ佐野さんに、私は、良かったですねと笑う。
とくにご主人の両親と仲が悪いと聞いた事はないが、独身の私には分からない、一般的な気苦労はあるのだと思う。
後は、麗華ちゃんに予定を聞いて、販売応援をどうするかだなぁ?
その時、麗華ちゃんが出勤して来た。
「おはようございます。」
「おはよう!」
「遥さん昨日どうでした?」
「うん…」
「優良物件じゃなかったんですか?」
「そんな事ないけど…」
西園寺さんは、麗華ちゃんの言う優良物件だろうけど…
まだ、どうなるか分からないし、相手はお客様でもあるから、詳しくは話せない。
「けど? なんですか?」
「あっそれより麗華ちゃん、夏休みどうする? 今年も海外旅行行くの?」
麗華ちゃんは春と夏に、ブランド品を買いに海外旅行へ行っている。
麗華ちゃんは『その為に働いているんです!』といつも言っている。
「今年は行かないですよ!」
「あら、どうして?」私は、首を傾げて聞く?
あんなに海外旅行、行ってたのに?
どうしたのやら?
「今年は、水野さんと旅行に行きたいなぁって…」
と、麗華ちゃんは照れたように言う。
「あぁそう言う事ね? じゃ決まったら早めに教えてね?」
「はーい❣」と麗華ちゃんは嬉しそうに返事をした。
ふふ。恋する乙女は可愛い。