双子の御曹司

それから間もなくして、車はホテルの地下駐車場に入っていった。
車を駐めると、西園寺さんは車から降り、わざわざ回りこんで、助手席の扉を開けてくれた。

海外にいたと言っていたし、こういった女性の扱いは、慣れているのだろう。

彼に付いてエレベーターに乗ると、扉が締まり直ぐに上昇はじめた。

小さな箱に二人っきりって緊張するな…
あれ、フロントに行かないの?

「あの…」

高速エレベータは上の階へ上がって行き、ポンと軽快な音、30階でエレベータは止まり扉が開く。

西園寺さんは扉が閉まらないように、ボタンと扉を押さえてくれている。
スマートな動作は、さすがホテルマンだ。
私は「どうぞ」と言われるままエレベーターを降りる。
毛足の長い絨毯、廊下の壁には素敵な絵画が飾られてどう見ても一般の客室階ではない。
西園寺さんは、3015号室の扉の前で止まり、カードキーを差し込むと、繊細な音がしてロックが解除される。
そして、扉を開け「どうぞ」と言う。

えー?
私この部屋に泊まるの?

「西園寺さん、私…こんな立派なお部屋じゃなくて…」

私は入るのを躊躇していると、西園寺さんは困った顔を見せた。

「今日は、ある企業のパーティにお見えになっている方々と、この悪天候が重なって、他の客室は満室になってるんです。申し訳ないですがこちらで?」と、言われてしまった。

そう言われてしまうと、仕方がない。
まさか、今から他のホテルを当たるわけにもいかず、私は仕方なく部屋に入った。
そこはとても広く趣のある家具が置かれている。

一泊いくらするんだろう?…怖い…
勿論、カード使えるだろうけど…
夏のボーナスだけで、足りるかな……





< 40 / 114 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop