双子の御曹司
マリアさんに見送られ、西園寺さんの車で住宅街をぬけ繁華街に出たところで、私は西園寺さんにお願いをした。
「西園寺さん、名古屋駅で降ろして下さいね?」
「どうして? 家まで送るよ?」
「でも、またこちらまで帰ってくるの大変だから…」
「………」
さっきまでふたりで機嫌よく話していたのに、西園寺さんは急に無言になり、駅に向かう事なくそのまま車を走らせる。
なんか怒ってる?…
機嫌が悪くなったみたい…
私、何か気に障る事言ったかしら……
「西園寺さん?…」
「…………」
「あの…私、西園寺さんの気に障る事言いました?」
「言った!」
西園寺さんは私を見ることなくそう言った。
「えっ? あの…ごめんなさい。」
どうしよう…
私、どんな気に障るような事を言ったのか思い当たらない…
「俺、ちゃんと彼氏になったんだよね?」
「えっ? あっはい!」
「どんなに遠くても、彼氏が彼女を家まで送るの当然だし、俺は少しでも一緒に居たい。遥ちゃんは違うの?」
「いえ…」
「それに、西園寺さんって呼ぶのはやめて欲しい。」
「え? でも、なんて呼んだらいいのか? 私、男の人と、こんなふうにお付き合いした事なくて…どうしたらいいのか分からなくて…。」
膝の上に手をモジモジしていると
「遥ちゃん…本当は聞くつもりは無かったんだけど? …伊月さんと付き合ってたって…?」
西園寺さんは、とても言いにくそうに聞いた。
「えっーどうして、そうなるんですか?」
「今日、遥ちゃんが着替えに行ってた時、伊月さんが、俺に耳打ちしたんだ。 『俺が、遥を初めて抱いた男だからな?』って!」