双子の御曹司

お客様に商品を買って頂くために、居るのが私の仕事。でも、私に会うためだけに来たと言って貰えるのは、正直嬉しい。

「そうか…?
じゃーみぃちゃんに買って行こうか?」

みぃちゃんとは、稔君の妹らしく、以前稔君が教えてくれた。

「うん! 僕選ぶね?」

妹のおもちゃを、一生懸命選んでいる稔君の姿が微笑ましく思える。

すると…

「両親以外に、僕達の顔を見分けた人は二人目です。」

不意に隣で呟かれ、彼を見ると眼が合い、私は眼鏡の奥の瞳に囚われ 、″ドックン″ と、自分の胸が跳ねたのを感じた。

え?…今のなに?

私は感じたことの無い、自分の体の変化に戸惑っていた。

「たっちゃんコレにする!」

その時、私は稔君の声に我に返った。

「あーそぅだな、それにしよう。これ頂けますか?」

稔君が妹の為に選んだのは、動物の小さな人形で、ファミリーシリーズのくまの親子だった。

このシリーズはドールハウスや家具が、精巧に作られていて、動物の家族や友達が、沢山ある女の子に人気のおもちゃ。

「は、はいプレゼント用にお包みしますか?」

すると稔君が私のスカートの端を引っ張って、

「お姉さん。ピンクのリボンつけて!
みぃちゃんピンクが好きなんだ。」と、言った。

「分かった。 ピンクのリボンね?」

私は商品をラッピングしてピンクのリボンをつける。

そして、「稔君これでいいかな?」と、稔君に手渡す。

「うん!ありがとう。」

稔君は、笑顔で私にお礼を言ってくれて、伯父さんに手を引かれて帰って行った。

私は、「有難うございました」とお辞儀をして彼らを見送る。

素敵な人だったなぁ…

何度か会っている稔君のお父さんには、感じなかったこの気持ち…

私は姿が見えなくなるまで見送っていた。





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