優しい胸に抱かれて

作業場に残されたのは私たちだけではなかった。日下さんと平っちも残っていて、二人は『忘年会こそ別の店に行くぞ』と、月に一度の反省会を称した飲み会が開催されるいつもの居酒屋以外のお店探しをしていた。

『日下さんもおめでとうございます』

『はい、はい。どうせ、俺はついでだ』

『…ついでじゃないですよ!』

『そういえば…、俺いいもの持ってきてたんだった』

『いいもの? どうせおやつだろ。俺、甘いもの食わねぇし』

ついでじゃないと弁明する私に、思い出したように平っちが口を挟む。それに日下さんが茶々を入れる。

『違いますって、見ます? ちょっと待ってください…』

がさごそと鞄の中に手を入れて何かを取り出した。写真みたいなものが2枚、出てきて日下さんへ渡った。

『誰だよ、この綺麗なお姉さんたちは? 何かのパーティーか?』

『…よく撮れてる』

日下さんから彼に渡って、その2枚を受け取ると目を細めて満足そうに頷いている。反対側へ回り、見せて貰おうと思って背伸びをする私に、見せまいと手を上へ伸ばす。

『見たい?』

眉を寄せる私にそう悪戯な笑みをするから、何度も頷いた。

『はいっ、見たいです!』

『こんなによく撮れてるのに、出し惜しみする意味が分からない』

勝ち誇った顔をして見えるように見せてくれた、指に挟まれた写真。

1枚は赤いドレスと濃い紫のドレスを着た綺麗な二人の女の人が小さな花束と賞状を見せて笑っている。もう一枚は紫のドレスを身に纏った人が恥ずかしそうに微笑んで…。

って、これはどういうことなのか。

何でここにこの写真があるのか。意味が分からない。これは、だって…。
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