優しい胸に抱かれて
 彼らの話し声にかぶるように、目の前の席の島野さんから話しを持ちだされていた。耳を研ぎ澄ましていたわけでもないのに、それでも聞こえてしまう。

「そうだった、柏木。メッセージカード出しといてくれ。リストはこれだ」

「はい。…こんなに、ですか?」

 受け取ったリストにはたっぷりの件数が書かれていた。

「はい、わかりました。島野さん、今度溜めたら自分でやってもらいますからね」
 
「わかった、わかった。カード作り一人で大変なら丹野にでも手伝ってもらえ。丹野! ちょっと手伝え」

 島野さんに呼ばれて丹野さんが、緊張した表情で私の横に立つ。緊張しているというより、みんなの目つきの悪さに怯えていると言った方がいいだろう。

「ただの葉書なんだけど、縁があってお世話になったクライアント、社長やオーナーさんに送るの。私たちに設計、デザイン、施工を任せてくれてありがとうって、感謝の気持ちをね。これが葉書」

「かわいいっ! これかわいいですね!」

 机に並べたメッセージカードを取ると、目をきらきらさせて大きな声を出す。緊張は何処へやら、その声の大きさにびっくりして私は瞬きを繰り返す。

「あ…、うん。ありがとう」

「あれ…? これ島野さんですか? もしかしてこの人は日下さん! 口がへの字ですね」

「丹野。少しボリューム下げろ」

「…すみません。これ、島野さんにそっくりですね」

「そいつの手作りだ」

「えーっ、これがですか? この写真が!」
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