優しい胸に抱かれて
首を振って泣きじゃくる私を強引に、ソファーの前まで連れてきて腰を沈めると、その膝の上に私の体を呼び寄せた。
「無理やりでも何でもいいから家に連れてきて。会社でも、外でも、どこでもなくて…。本当は、ここできちんと言いたかったんだ。ここが、終わった場所だから…、ここでまた始めたかったんだ。ごめん…」
終わった場所だから、拒んでいたのに。だけど、咽び泣くしかなくて。
着替えたばかりで汗ばむ背中。大丈夫って言い聞かせるみたいに、力強くて優しく抱き締められる。
「会社で言った通り。これからはきちんと、受け止めるから。紗希の2年分しっかり受け止めるから。紗希は…、俺に言いたいこと言って? 我慢しなくていい。何でもいい、ぶつけていいから…」
体中が痛くて怠い。息は苦しいし、結構な熱が出て辛いんだってことがわかる。でも、言葉にできずにこんなに涙が出るのを、熱のせいにはしたくなかった。
「紗希…、手出して」
そろりと手を差し出すと、体と体の間で、私の掌の真上に自分の掌をかざす。
重ならないくらいの距離が作られると、僅かに開いた指の隙間に小さな指輪を落とした。
回転する間もなく落ちてきた指輪は、私の掌が受け止める。
訳がわからず、霞む視界の中心に焦点を当てる。指の隙から零れた指輪を見入っていると、「ちょうだい」と言われ、差し出された掌へ乗せた。
「…もしさ、俺が受け止められなくて、取りこぼしたら。今みたいに、紗希が俺に突き返して。きちんと受け止めろって言って…」
眉を下げた切なそうな表情で、静かに言葉を紡ぐ。そうやって鼻を啜りながら言われても、しゃくり上げる声しか出てこないのに。
「無理やりでも何でもいいから家に連れてきて。会社でも、外でも、どこでもなくて…。本当は、ここできちんと言いたかったんだ。ここが、終わった場所だから…、ここでまた始めたかったんだ。ごめん…」
終わった場所だから、拒んでいたのに。だけど、咽び泣くしかなくて。
着替えたばかりで汗ばむ背中。大丈夫って言い聞かせるみたいに、力強くて優しく抱き締められる。
「会社で言った通り。これからはきちんと、受け止めるから。紗希の2年分しっかり受け止めるから。紗希は…、俺に言いたいこと言って? 我慢しなくていい。何でもいい、ぶつけていいから…」
体中が痛くて怠い。息は苦しいし、結構な熱が出て辛いんだってことがわかる。でも、言葉にできずにこんなに涙が出るのを、熱のせいにはしたくなかった。
「紗希…、手出して」
そろりと手を差し出すと、体と体の間で、私の掌の真上に自分の掌をかざす。
重ならないくらいの距離が作られると、僅かに開いた指の隙間に小さな指輪を落とした。
回転する間もなく落ちてきた指輪は、私の掌が受け止める。
訳がわからず、霞む視界の中心に焦点を当てる。指の隙から零れた指輪を見入っていると、「ちょうだい」と言われ、差し出された掌へ乗せた。
「…もしさ、俺が受け止められなくて、取りこぼしたら。今みたいに、紗希が俺に突き返して。きちんと受け止めろって言って…」
眉を下げた切なそうな表情で、静かに言葉を紡ぐ。そうやって鼻を啜りながら言われても、しゃくり上げる声しか出てこないのに。