優しい胸に抱かれて
オーガニックショップで購入したというオーガニックバーム、ボタニクスって言ったか?話に聞くところ、万能バームだと言う。

あせもやニキビ、肌荒れ、消臭、虫刺され、傷や火傷なんかにもいいらしい。もちろん、赤ちゃんのおむつかぶれにも有効、だそうだ。

そんな優秀な万能バームの成分は、肌に優しい100%オーガニックな分、小ぶりな瓶の割に値段は高め。紗希から姉へのプレゼントだ。

しかし、その効能は使ってみないとわからない。と、半信半疑で自分用にも購入し、俺の体で試すのが日課となっている。


俺がシャツの上から脇腹を掻き毟っていると、捲り上げ少し赤みを刺す肌へと丁寧に塗ってくれる。

「どうかな?」

効果が出たかどうかってことで聞いたのだろうが、大抵は気が付けばスーッと痒みは治まっている。効力が発揮しているかといったらグレーゾーンであり、万能かといえばセンシティブなところだ。


「ん。くすぐったい」

ぎこちない手つきは余計に刺激し、くすぐったさを掻き立てる。

紗希はつんつん指で突いてみたり手つきを変えるも、どれも似たような感覚を与えられたのだが、その様は楽しそうなので好きにさせておくことにした。


「お腹、大きかったね?」

満足したのか、瓶の蓋を閉め両手を出した紗希は、大きさを現そうと自分のお腹の前で、弧を何度か描く。そして、余韻に浸るかのようにほろりと呟いた。

「よかった…」


紗希?おれもよかったよ、紗希の嬉しそうな顔が見れてさ。


言葉にしない代わりに紗希の頭を撫でると、より深く嬉しそうに微笑んだ。

「ゴールデンウィークまでには産まれてるよ。会いに行こうか、一緒にさ?」

「いいの?行っても?」

「いいよ、親も喜ぶよ」


何せ姉はあんな調子だし、建設業ってことも手伝って家にはガサツなおっさん連中しかいない。女の子って年ではないが、おっさん連中からすれば女の子なのだ。紗希を連れて行けば、女の子がいて珍しいと見世物になってしまうのだが、みんなも喜んでくれる。
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