優しい胸に抱かれて
≠新婚ごっこ
ベンチに寝そべっていると誰かが上がってきたらしく、重たい鉄扉が開いたのがわかった。
そして、その誰かってのが予想していた奴だったから、自然と眉根を寄せた俺は、煩わしげに目線だけを傾ける。
「日下さん、ドアノブなんていらないです」
ぴらっと用紙を俺に見せ付けた柏木が、上から覗き込んできた。それによってできた影で直射日光を最大限に浴び、眩んだ目を休ませる。
コイツじゃなければ、そこにずっと立ってろと言いたいところだ。
逆光で表情はわからないが、これも想像がつく。眉間に皺を作って、恨めしそうに俺を見下ろしている、ってことが。
「ノブがなかったら、扉が開かねぇだろ…」
「あ、そっか…。そうですよね」
何に納得したのか、感心したような声を上げた。
コイツ…、本当に解ってんのか?
遡ること小一時間前。
今の柏木同様、やっぱここにいた。と、平が屋上へやってきて、考えあぐね、こんがらがった思案時間を邪魔した。
『日下さんは何を贈るんですか?』
それどころじゃねぇよ、邪魔すんな。
その視線に気づいた平は、『…サボりにしか見えませんよ?』そう言って、リスト表みたいなものを顔の前に差し出した。
現金、冷蔵庫、洗濯機、ソファー…。現実的な工藤の字のあと、柏木の字に目が留まる。
『ホームベーカリー…?』
『パンを焼きたいらしい、しかもコッペパン』
コッペパン?よくわかんねぇな。
ル・クルーゼの鍋って、ブランドの指定かよ。料理を毎日する奴が欲しがるべきものだろ。
『で?平は何にしたんだよ?』
『空気清浄機。部長は現金。島野さんと佐々木さんは食卓テーブルセット。しかも、柏木プロデュースの新商品。女子は調理器具。残ってるのは冷蔵庫とか。引っ越しの時に家電は購入済みってことで却下として…。問題はこれです』
指された一番最後、工藤の字で[家]と書かれていた。
そして、その誰かってのが予想していた奴だったから、自然と眉根を寄せた俺は、煩わしげに目線だけを傾ける。
「日下さん、ドアノブなんていらないです」
ぴらっと用紙を俺に見せ付けた柏木が、上から覗き込んできた。それによってできた影で直射日光を最大限に浴び、眩んだ目を休ませる。
コイツじゃなければ、そこにずっと立ってろと言いたいところだ。
逆光で表情はわからないが、これも想像がつく。眉間に皺を作って、恨めしそうに俺を見下ろしている、ってことが。
「ノブがなかったら、扉が開かねぇだろ…」
「あ、そっか…。そうですよね」
何に納得したのか、感心したような声を上げた。
コイツ…、本当に解ってんのか?
遡ること小一時間前。
今の柏木同様、やっぱここにいた。と、平が屋上へやってきて、考えあぐね、こんがらがった思案時間を邪魔した。
『日下さんは何を贈るんですか?』
それどころじゃねぇよ、邪魔すんな。
その視線に気づいた平は、『…サボりにしか見えませんよ?』そう言って、リスト表みたいなものを顔の前に差し出した。
現金、冷蔵庫、洗濯機、ソファー…。現実的な工藤の字のあと、柏木の字に目が留まる。
『ホームベーカリー…?』
『パンを焼きたいらしい、しかもコッペパン』
コッペパン?よくわかんねぇな。
ル・クルーゼの鍋って、ブランドの指定かよ。料理を毎日する奴が欲しがるべきものだろ。
『で?平は何にしたんだよ?』
『空気清浄機。部長は現金。島野さんと佐々木さんは食卓テーブルセット。しかも、柏木プロデュースの新商品。女子は調理器具。残ってるのは冷蔵庫とか。引っ越しの時に家電は購入済みってことで却下として…。問題はこれです』
指された一番最後、工藤の字で[家]と書かれていた。