優しい胸に抱かれて

『主任…、こんな夜中に、すみませんでした』

『…いいよ、気にするなって言っただろ?』

『私…、振られました』

『うん…』

『なんとなく付き合いが始まって…。好きだったのかもよくわからなくて、でも、会いに行くってことは好きだったのかもしれません』

『…うん』

何処かに出掛けるわけでもなく、週末男の部屋で過ごす。一緒に出歩いたことがあるのは付き合い始めの最初の1ヶ月。

私がその男に怒ったことがあるのも同じ頃、約束をすっぽかされたから。

とっくに終わってるし、笑われるし、すぐ怒るしって言われて、何のことを指しているのかすぐに理解できなかった。

忙しくなってきて私は仕事を優先した。だから、二股掛けられたのかとも思ったけれど、恐らく、その最初の1ヶ月で飽きられていたのかもしれない。もっと早く気づけばよかったって思う。


金曜の夜じゃなくたって、平日の夜に押し掛けて問い詰めればいいのに、2ヵ月近く連絡がない状況にとっくにわかっていながら離れられなかったのは、好きだったのだろうか。

しっかり確かめたかった。私は必要とされていないんだってことを。

宙ぶらりんな関係を早く終わらせたかったのかもしれない。
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