計画的俺様上司の機密事項
ブラインドを開けて、部屋の空気の入れ替えをした。

秋の涼しい風が部屋にたまった空気を押し流してくれる。

中庭の植木も柔らかな風に枝葉が揺れていた。

ここの植木も紅葉したらいいのにな、と思いながら。

夕焼けを望みながら、中庭に出る。紅葉しそうな植木がある。

常務の趣味なのだろう。このスペースを有効活用できたらいいのに。

あ、いいこと、思いついた。

9階の戸締りをして、4階に戻る。

うちの会社が発行している歴代のグルメ本を眺めながら、これはいけそうなものをピックアップして記事にしてみた。

記事を書き終え、プリントアウトして、シンちゃんの机の前にいった。


「あ、あの。結城部長、まだ締め切りじゃないですよね」


「ん? どうした」


「差し替えの記事、作ってみたんですけど」


プリントアウトして野上くんとシンちゃんに記事を渡した。


「中庭をのぞめる身近な紅葉とともに楽しむグルメか。いいんじゃないか。どうだ、野上」


「いいんじゃないですかね」


野上くんはまずまずといった具合で軽く首を縦に振った。


「あ、ありがとうございます」


「校正して記事に加えるか」


よしっ、と心の中で叫びながら、自分の席につく。

シンちゃんもわたしをみて、口角をあげていた。

校正をかけて、写真も過去のデータから引っ張っていこう、と前向きな気持ちでいたところを空気でも察したのかわたしの机の内線が鳴った。


「4階、有沢です」


「有沢〜。頼む、助けて〜」


電話口からまた渡瀬先輩の困ったときに出す猫撫で声がする。
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