計画的俺様上司の機密事項
「3階へいってきます」


なんだか足取りも軽やかに3階へと降りる。

まだひとつの記事だけど、それでも認められるって嬉しい。

3階につくと、いつものように渡瀬先輩がわたしの顔をみるやいなや両手を振って助けを求めていた。


「いつもすまないな、有沢」


「いいんですよ。これぐらい。で、このデータを動かせばいいんですよね?」


「そう。このデータが欲しいんだよ。まったくわかりやすい入力フォームにすればいいのに」


渡瀬先輩が嘆いているのを横目でみながら、適切なデータを引っ張ってきてデスクトップに保存しておいた。


「あら、有沢さん、今日はご機嫌ね。どうかしたの?」


真鍋先輩がお茶とお茶菓子を用意してくれた。


「そ、そんなことないですけど」


「毎日、あたしらの顔みられるから嬉しいんじゃない?」


渡瀬先輩が笑うと真鍋先輩も上品にうふふと笑う。

渡瀬先輩が独り立ちしてほしいなあと困りながら、作業を手伝った。

4階の自分の机へと戻るともうすでに二人は帰ってしまっていた。

机の上には野上くんの丁寧な字で赤いペンで修正が入れられている。

わたしも野上くんみたいに頭の回転がはやければいいのになあ、としょげつつも、記事を直した。

帰り際、わたしより背が高く、ハイヒールの足音を響かせながら歩く髪の長い女性とすれ違った。

すれ違いざまに一瞬、にらまれたように思えたのは気のせいか。


「あれ、やっぱりなくなってる」


朝、新しいタイムカードにかえたはずなのに、またなくなっていた。

警備員さんに尋ねてもわからないとの回答で、しぶしぶまた新しいカードを取り、タイムレコーダーに差し入れた。
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