計画的俺様上司の機密事項
今日も２０時過ぎに自宅に戻り、ドアを開けるとすでに廊下じゅういい香りが漂っていた。


「夏穂ちゅわ〜ん、おっかえり〜」


ドアの開ける音を聞きつけて、甘ったるい声をあげながら、いつものTシャツ、エプロン姿のシンちゃんは玄関まで駆け足でやってきた。

そのままわたしにくっついてきそうだったので、靴を脱ぎながらシンちゃんを避けた。


「だから、その甘ったるい感じはやめてほしいんですけど」


シンちゃんはわたしの問いにも答えず、ニヤニヤと笑いつつ、両手で手をもみながらクネクネと足をくねらせている。


「ええ〜、いいじゃあ〜ん。今日は夏穂たんの好きそうなメニューにしてみましたあ〜」


会社と家のギャップが半端ないし。

言っても聞かないので、わかりましたから、とつぶやくと、ちゃんと手洗いうがいしてよね、とまたお母さんシンちゃんに変身してダイニングへと行ってしまった。

まったくシンちゃんって人はよくわからない人だなあ、とため息をついた。しかたなくシンちゃんの待つダイニングへと向かうと、


「今日はね、さんまが安かったから焼きさんまと栗の炊き込みごはん、野菜のソテーにお味噌汁にしてみました〜」


どれもこれもテーブルに乗るものはすべててらてらとダイニングの天井からの照明できれいに映えている。

自分の席につくと、シンちゃんは手をあわせ、いただきます、と言って箸を持った。


「いただきます。……おいしい」


「そうだろ。出来立てがおいしい。それにオレと一緒にメシを食うのが一番、おいしいってこと」


がははは、と笑いながらシンちゃんも一緒にごはんを食べた。


「……今朝のサンドイッチもお昼もおいしかったです」


「それならよし！」


満足そうにシンちゃんは栗の炊き込みごはんを頬張りながら、安心できるにんまりとした笑いを返してくれた。
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