計画的俺様上司の機密事項
食後のデザートとして梨を剥いてくれた。

ガラスの器にきれいに盛られていて食べるのがもったいなかったけど、食えよ、とシンちゃんから促されて食べる。

じゅわっと梨の甘さとさくっとした歯ざわりに秋の味覚を堪能できた。

もうちょっとで柿が安くなるんだって行きつけの八百屋のじいさんがいってたんだがなあ、とシンちゃんはつぶやく。

仕事をやりつつも、家事全般をこなしてしまうシンちゃんはさすがだな、と思う。

器用にできる技量がうらやましい。

小さい頃からシンちゃんは恵まれた才能の持ち主だったんだろうか。

確かに小さい頃、周りの子たちの面倒をみてくれていた。もちろん、わたしもその中のひとりだった。

それでも、ここまでしっかりした人になるなんて、思ってもみなかったけど。


「シンちゃんっていろいろとできてすごいね。わたしにできることなんか、あんまりないけど」


そういうと、向かい合わせに座って梨を食べていたシンちゃんの頬がほんのりピンク色になった。


「そんなことねえけどな。でも、夏穂は夏穂なりにできることがあるだろ」


「家事はできませんが、雑用専門ですけどね」


そういうと、シンちゃんは呆れてポカンと口を開けている。


「あのな、オレぐらいの歳になればできることとできないことの区別がつくようになる。まあ、えらそうなことばっかり言うけどな。仕事で」


「そんなことない。シンちゃんはすごいと思うよ」


さらにシンちゃんを褒めると、いやらしさを含ませた笑いをする。


「ん? すごいこと? 何だろうね〜。どういうところがすごいかなあ」


「だから、関係ないって」


シンちゃんは立ち上がり、わたしのところまでやってきた。


「夏穂と家でこんなことしちゃうってことかな」


右の人差し指でわたしのあごをぐいっとあげると、チュっと不意打ちで唇にキスをした。
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