計画的俺様上司の機密事項
6階は総務部が陣取っていた。

うちの部とは違って角ばった感じの雰囲気が漂う場所だ。

奥には部長らしき男性社員の机があり、その前の机の島に数人の社員がいて険しそうな顔を浮かべて仕事を進めていた。


「ウェブコンテンツ部の有沢です。上条さんいらっしゃいますか」


入り口近くにいた1つ上の男性先輩社員に声をかけてもらった。

男性先輩社員が部屋の奥へといき、部長に近い席の女性へと話しかける。

その女性とともにこちらへとやってきた。

男性先輩社員はそのまま自分の席に戻り、その女性はプリントアウトされたものを持ってきている。


「上条だけど」


かちっとした灰色スーツに黒の膝上のタイトスカート、エナメル調の黒のパンプスを履き、部屋の奥から肩から数十センチほど伸びた黒髪をたなびかせてきた。

そういえば、帰宅前にすれ違った刺々しい感じな女性だった。


「ああ、有沢さんね」


「は、はい。上条さん、お話というのは」


「メールで送られた書類なんだけど、受理できないけど」


「え? 不備がありましたか」


「あるから言ってるんだけど」


受付のテーブルにプリントアウトされた紙を置く。

薄ピンクのきれいに整えられた爪でトントンと紙を叩かれた。

指された箇所をよく見ると、注文する項目の数量に抜けがあった。


「申し訳ありません。すぐに直してチェックして送ります」


「こんなのミスするってどういうこと? こっちはあんたに遊ばれてるみたいでシャクなんだけど」


「……す、すみません」


遊んでなんかいないし。

ちょっとだけ数量ミスしたからってそこまで言わなくてもいいのに。

さらにわたしの顔をなめるようにみて、ふん、と鼻息を荒げた。


「あのね、内線の電話の口調、友達感覚だったけど、どういう意味?」


「あ、あれは……。以後気をつけます」


いつもの癖で渡瀬先輩かと思って電話に出たのがまずかった。

慌てて頭を下げた。


「まあいいわ。今後気をつけて。もういいわ、帰って」


「……はい」


総務から部屋を出るとき、一礼したけれど、上条さんはじっとわたしを睨みつけていた。
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